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手紙:2023-06-09

意志を生み出す

肉体は欲望の結果

皆さんは毎日の食生活に気を配っていますか?現在は予防医学が盛んになり、健康を左右する食べ物は、常に話題に上ります。病気を防ぐ為には、医学的知識に見合った食品と食べ方に気をつけないといけません。正しく知識を学ぶと「食べたい物と、食べるべき物は違う」事がわかります。「食べたい物」とは、肉体や心の欲望が欲する物、一方「食べるべき物」とは、肉体の法則に合った物です。この違いを知るには、知識が必要です。

しかし肉体の状態は、食べ物だけに左右されるものではありません。密教的には、肉体は過去が正確に表れたものです。勿論遺伝的な要素は大きいですが、魂は自分のカルマや傾向意識に沿った家系を選ぶので、厳密には言い逃れができません。肉体は、心の状態が最も反映された「欲望の結果」を表すものなのです。

では、これをもっと大きな方向に拡大して解釈してみましょう。「経験を味わう」と言う表現がありますが、人生で選ぶ経験も、「やりたい事と、やるべき事」は違います。若いうちは、自分がしたい事をしても、大した問題にはなりませんが、社会人になり、責任を負ったり、広い関係の中で目的が決まってくると、人は「やりたい事とやるべき事」の間で苦しむようになります。そして、わかっていてもできない、長続きしない、意志が強ければできるのに…と、多くの人が悩むでしょう。考えた通りに行動できる、それは自己統一と言う高度な進化の到達点です。しかし、自己統一には、正しい方向付けと相当の意志が必要です。今回は、意志とは何か、どうしたら意志が強くなるか、原理から考えて、今後の人生に生かして頂きたいと思います。

欲望と魂の対立

人の中には二種類の意識が働いています。昔から「悪魔と天使」「肉の声と神の声」「悪意と善意」などと言われていますが、それは個人的な意識と、魂的な意識を表します。個人的な意識は、「個人を維持する為の欲望」に基づいているので、根本的に誰でも利己的で、無秩序、反射的、個人特有です。私達は自分の欲望や考えを、「皆そう思う」と言いますが、厳密には全く同じ欲望の考えは、少ないものです。欲望は個人の中でも、体の声、心の声、知性の声があり、それぞれバラバラで、変わり易く流動的です。細胞や原子でさえ独立した欲望があるので、その集合体の個人は、一人として同じ人はいません。ですから、完全に同じ意識はなく、全ての人の欲望を一致させる事は不可能なのです。

一方、魂的な意識は、個人よりもっと大きな単位の法則に基づいています。それは人類全体を含む宇宙的な法則です。魂の知識は個人を越えた普遍的な法則に基づいているので、魂に意識を合わせると、バラバラな個人の欲望を統一し、正しい原理に従い、人類全体の進化に向かう事ができます。

私達は個人として欲望を持ちながら、人類として魂的に考える事ができます。どちらの声も、聞こうと思えばいつでも聞く事ができ、どちらを選ぶのも自由です。人間は発達してくると、どちらの声も明確で強くなり、自分の中で対立が起こります。ここで「やりたい事と、やるべき事は違う」と言う考えに苦しむようになるのです。頭では正しい事をすべきだとわかっていても、欲望の声は、とても慣れ親しんだもので、無視する事ができません。では、どうしたら「すべき事をする意志」を、引き出せるのでしょうか。

意志に向かう時間

実は、意志は人格の中に、最初から存在しているのではありません。これは二つのものを融合させる事で生まれてくる第三の力です。その二つとは「考え」と「行動」です。つまり考えた通りに行動する事で、三つ目の意志が生まれるのです。一つの考えに沿って行動する間に、霊的な火が燃え上がり、意志力を生み出します。どちらが欠けても、意志は生まれないので、考え(思いではなく)と行動を明確にしなければなりません。

もし正しく意志の火が燃えれば、欲望は燃やされて減っていきます。これを続けていると、欲望の火は次第に弱まって、考え(知性)の方が強くなっていくでしょう。意志が弱いのは、日常生活で正しい知識に基づいて考える事、それに従って行動する訓練を怠っているからで、何か特別な理由がある訳ではありません。

意志を強くする訓練には、もう一つ条件があります。それは一定の期間やり続ける事です。意志は、情熱を静かに長く燃やし続ける事で、確たるものになります。衝動的に、短期間、自分の都合で、あれこれバラバラな事に手をつけていると、意志になりません。何故でしょうか?それは、意志が働いている時間とエネルギーが不足しているからです。

意志とは、性質が変化するまで支配する力です。例えば、精一杯やっているのに結果が出ない、自分は変わらないと悩んでいる場合、意志が働いている時間と、休んでいる時間を比べてみて下さい。休んでいる時間とそこで使っているエネルギーが上回っているなら、休んでいる間に欲望は野放しになって、元に戻ってしまいます。その為、意志を引き出そうとすると、ある程度、継続的な仕事や目的に向かう長時間の活動が必要になるのです。

意志は生み出されるもの

意志は、思いつきや衝動、単発的な行動で生まれるものではありません。長時間、目的に向かって燃え続ける事で、生まれるものです。意志の達成は、高い山に登る事に例えられますが、大事な事は、実は山頂に立つ事ではありません。山を登り続けた時間、自分を支配する力、欲望を変質させる努力を持続する事なのです。つまり、山頂に着いた時、欲望が燃え尽き、意志の火がその人を変貌させている事が重要なのです。

これは体質改善と似ています。体重を減らしたり、食べ物を変える事だけがゴールではなく、体に悪い食べ物を好まない体、理にかなった良い物を自然に好む肉体、つまり体の欲望の方向や習慣自身を変えてしまう事がゴールです。私達は、問題が起きたり、飽きたりすると、方向を変えがちですが、それでは意志は生まれません。また、どんなに素晴らしい事でも、その人にとって、楽ですぐにできる「良い事」を沢山したところで、意志は生まれません。何故なら、意志には、その人なりの欲望の変化や知性の進化が必要だからです。変化の火が燃え、性質の一部が変わらなければ、意志は生まれないのです。

最終的に、人間の素晴らしさは、意志の強さで表されます。自分自身や周囲の物質は、元々無秩序な欲望を持っていますが、人間だけが、それらを法則に沿った方向に向かわせる事ができるのです。

意志が弱いのは誰でも同じです。みな同じ無秩序からスタートするからです。そして、どの段階にいようが、全ての人が意志の火を燃やし続けるべきなので、その人なりの努力が必要です。自分で考えられるようによく学び、行動を起こし、更に、その考えを、人類にとって良い目的や動機に改善するよう検討を続けて下さい。どの段階でも、この努力を続ける人は、魂に向かって炎を放つ火の存在になるでしょう。この火こそが、意志を生み出す力です。人と比較するのではなく、今自分が立っているところから、自分なりの山を登ろうと決意しましょう。こうして、私達は皆、真の人=「火の戸」となるのです。

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