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手紙:2019-09-13

リズムと生命

リズムの意義

皆さんはリズム感が良い方ですか?こう問われると、ダンスが上手いとか音楽が得意とかを思い出すでしょう。ダンスやフィギュアスケートで、リズミカルに踊り、曲に乗っている姿は美しく、見ている者を魅了します。反対にどうもぎこちない、何か曲に乗り切れていない様子は、何となく違和感を感じます。自分ができるかどうかは別にして、人はリズムが合っているかどうかに敏感なのです。何故でしょうか。

リズム感が良く、曲に乗っているとは、肉体、心、頭が一つのリズムに統一され、曲と一体になっている状態を表します。つまり、人間は別々のものが融合、協調して一つになっていると、「美しい」「気持ち良い」と感じるのです。その時全体を一つにまとめる鼓動や波動を、「リズム」と呼びます。リズムとは、音楽だけでなく、全生命に宿っている振動です。原子の小さなリズムから、地球と言う一つのリズム、太陽系のように宇宙的なリズム、目に見えない魂のリズムなど、全生命、全次元はそれぞれ固有のリズムで振動し、生きていると言えます。

子供の感性教育にはリズムは大変重要なもので、既に多くの人が注目していますが、今回は広い意味でのリズムについて、密教的な側面から考えてみたいと思います。

リズムと環境適応

人間の個性には、自分の体、心、知性がありますが、それらは元々固有のリズムを持ち、バラバラなので、一つに統合する事が進化のプロセスです。個性が円熟している人は、人格が一つのリズムで振動しているので、リズミカルな人格となり、物事に集中し易く能力が明確になります。更に、そのような統合された人格が、魂のリズムと一致し振動している人は、優れた理解力と人々への霊的な影響力を発揮します。つまり生命の進化は、より大きな高いリズムへの融合だと言えるのです。人はこの法則を無意識に感じ取っているので、リズミカルなものに惹かれるのです。

もし私達がやるべき事に、迷いなくすぐ取りかかれるならば、充実感を感じ、時間やエネルギーを大きく節約できるでしょう。ところが、自分の内部は中々一つになりません。体が動かない、心が言う事をきかない、頭が働かない、あるいはどれかが単独で突出すると言うように、三つが同時に一つのリズムに統一されないのです。

この三つを一つにする為に、人生には様々な環境が用意されています。生まれた瞬間から親のリズムと共に成長し始め、家族、学校、職場、結婚相手、様々な人間関係と様々な目的の環境など、異なったリズムに合わせる訓練が次々と現れます。そのリズムを①読み取って②自分を融合させる事で、人格の「統合」と、「適応力」を練習するのです。

子供の頃、音楽や体育でリズムに合わせる訓練をするのは、リズム感を養う準備です。人間的、環境的、あるいは目的に対するリズム感が発達し、自分を支配して適応力を発揮できれば、音楽や体育のリズム感が優れなくても問題はありません。事実、経験を積んだ大人は、運動機能は落ちますが、能力が知的適応力に移行しているので、進化していると言えます。反対に体のリズム感が良くても、物事に対する適応力が狭かったり、人間関係の理解が狭い意識は、人間的リズム感が悪いと言えるでしょう。

愛のリズム

以前は個性が強く、力で周囲を支配する人が、英雄のように崇められ、人々が従った時代がありました。しかし、水瓶座の時代に入り、そのような人の知性は、高度に発達していても、魂のリズムと同調する事を拒む傾向が強く、進化から見ると大きな問題があるとわかってきました。

そこで地球が人類に課した新しいリズムが愛なのです。これは多くの人々の意識に浸透し、受け入れられつつあります。例えば多くの人が、利己的なヒーローより、理解、協力、冷静な知性、深い同情心などを好むようになってきました。戦争より融和や協力が好まれ、利己的な強い人より、優しさや思いやりのある協調的な人格が成熟していると思われるようになり、社会の風潮が変わってきたのです。

人間の進化とは、自分のリズムを相手に押し付ける事ではありません。これは我がまま、利己主義、強制と言うものであり、暴君的な要素に脅威を感じています。政治的にも管理者の資質にも、求められる要素に、変化が表れてきたのです。

私達は自分が折れたり、考えを変える事に大きな抵抗を感じますが、様々な環境への適応は、理解を拡大する愛のリズムを訓練していると捉えれば、考え方は大きく変わるでしょう。人生の難局や困難は、人格を統一するリズムの訓練と、リズムの幅を増やす訓練です。古い自分のリズムを破壊すれば、結局は新しい大きなリズムを理解でき、その能力は人格の大きな財産となるのです。

加えて、様々な環境や人への適応には、相手の心や知性のリズムを読み取る必要があります。自分の好みや主張ばかりにこだわらず、どのようなものでも理解しようとする知的態度が、正しいリズムの識別力を養い、物事を正確に読み取る理解力となります。失敗や苦難はリズムの限界を教えてくれます。このような経験から、私達は自分の小さなリズムを破壊し、より包括的なリズムに変わっていくのです。リズムの拡大は、魂と合一する愛の土台となるでしょう。

魂のリズムと協調する

人間の大きな目標は、人格を魂=愛のリズムに一致させる事です。魂は全人類最高の理知的リズムであり、人格と比べると、その影響力や強さは比較にならない強大な存在です。しかし、人格が魂に興味がなく、利己的に勝手気ままな生き方をしている間は、魂は人格に対して影響力を揮う事ができません。

魂のリズムを取り入れようとするならば、まず私達は自分を支配し、安定させる必要があります。昔からあらゆる宗教で説かれている欲望の浄化、心の安定、平静で穏やかな意識を培う訓練が、魂のリズムを受け入れる土台となります。

また、基本的な事ですが、リズミカルな生活を送る事により、健康な肉体と健全な習慣が手に入ります。リズミカルな生活とは、(朝夕などの)自然の周期に反しない規則正しい家庭生活であり、家庭を運営する人の責務となります。更に規則正しい生活リズムは、社会と関わる為の重要な土台にもなり、適応力の基本となるでしょう。

更に、自己統一した知性の方向を、人類全体を率いている崇高なものに向ける必要があります。自分の考えや目的ばかりに目を向けず、謙虚な意識で、大いなる存在へと向けるべきです。それは真の意味の信仰心となるでしょう。

宇宙のシンフォニー

さて、宇宙は神のシンフォニー(交響楽)と言われています。無数の惑星が固有のリズムで生きながら、互いに神の目的に協調し、同じリズムの中で活動しています。個のリズムは明確でありながら、大きなリズムに同調し、共に生きる。宇宙はその姿を表したものなので、人間もその美しさに魅了され、宇宙を見上げては、壮大な神秘を感じるのです。リズミカルな存在は、小さな人間一人でも、家庭生活でも、広大な宇宙でも、同じように美しいものです。

人生は、愛のリズムに同調する訓練場です。このようなリズムの観点から、今人生で起こっている事、経験している事を考えてみると、全く違った価値観が浮かんでくるのではないでしょうか?人類一人一人が、夜空の星のようにきらめいて、宇宙的な交響楽になるよう、私達の努力はこれからも尽きる事はありません。魂が見えない世界で共振し美を放つように、人類も地上でその美しさを実現する事は約束されているのです。

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