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手紙:2021-11-12

予防医学と知識

生活習慣が変えられない理由

最近のテレビ番組は、コロナ感染前から、医学の知識を紹介するものが多くなっています。これは、個人が健康に大きな興味を寄せている事と、一般人の知性が、医学知識を理解するまで発達してきた事が関係しています。その中でも、病気を避ける予防医学の知識は、これからの主流になる兆しが見えてきました。

一方、医療現場からは、予防として生活習慣の指導を行っても、中々実行してくれないと言う声があります。原因は、その人の心や考え方に問題があると言うのです。つまり、どんなに正しい知識があっても、意識が変わらない限り生活習慣は改められないのです。

健康が生きる目的ではありませんが、病気や予防にどう対処するかを見ると、その人の意識のあり方がわかります。健康の問題は、結果が出るのでわかり易く、また密教の観点からも「人間は考えた通りのものになる」と言う意識の投影なので、肉体状態はわかり易い存在です。健康問題の背後には、意識活動の進化、知性と意志の発達があります。今回は、最も身近な健康の予防の観点から、意識活動を確認したいと思います。

生活習慣の改善が上手く行かない原因は、主に二つあります。一つは意志が弱い為です。運動も飲食の改善も、体の惰性に負け、まだ病気ではないしと、ついつい後回しにしてしまいます。薬を飲みながら、暴飲暴食を続けるケースは珍しくありません。自分は変わらず、都合の悪い結果だけ変えたいと願い、簡単な方法を求めるからです。この問題は、健康が目的と見えますが、人としては、意志が発動しない事が真の問題だと言えます。

健康と知性の発達

二つ目は知性が正しく働かない為に、正しく認識できない事です。検査結果から、改善点を伝えられても、「私は運動しているから大丈夫」とか、「うちは〇〇病の家系でないから」「私は、魂が守ってくれるから病気にはならない」と思い込んでいる人がいます。これは誤った信念や個別の少ない情報、あるいは幻想を抱いている場合で、客観的にデータや自分を見る知性が曇らされている状態です。

また、過度なストレスが慢性的にかかっている場合、そのストレスを認識できない場合があります。その時、一度立ち止まって自分の心や体の状態を観察し、一般的な知識と照合して考える必要があります。コロナ禍で、今までの習慣が断ち切れ、静かに考える時間があった事は、良い機会でもあるでしょう。

人間の体や心はある程度共通の構造があり、同じ知識が適用できるからこそ医学や心理学、科学が成り立ちます。自分を特別なものと思わずに、一人の人間として、客観的に眺めてみる、正しく認識しようとする態度が知性の基本です。

また情報を感覚的に受け止め過ぎると、当然知的には考えられません。誰でも医者から悪い結果は聞きたくないものです。うろたえると、何故そうなったか?と言う原因を考えるより、「困った!どうしたらいいですか?治りますか?」と言う方法論と結果だけ聞き、早く安心したいと言う感覚だけが働いてしまうのです。

更に指示を聞いた時も、それはやりたくない、自分のスタイルに合わないと言う好みが先に立ち、正しい選択や検討ができなくなってしまいます。このような意識活動は、ただ感覚と感情が働いているだけで、知識を扱う知性がどこにも働いていません。

日常生活の大切さ

ここまで読むと、「そんな馬鹿な事、私はしない」と思うかもしれませんが、これは人事ではありません。人の知性が発達しない理由は、日常生活で感覚や感情を使い過ぎている事が原因です。殆どの人が習慣(惰性)と感覚を主体に、一日の大半を過ごしている為、いざと言う時、知的に考えて生活を変える事が難しいのです。

大抵の人は、知識を覚える記憶は発達しているので、論理だけ聞くと一見知的に見えますが、根底は「好き」か「嫌い」か、「良い」か「悪い」かの個人的感覚を正当化する為に、長々と説明する場合が殆どです。私達の意識は、欲望、感覚、感情が最初に発動し、論理は後からつけられます。知性が使える人でも、自分の事が関わると、感情的になり、主張すればする程、感覚や欲望を強める悪循環を生み出します。論理は知的な説明にはなっていません。

では、どうしたら知性が発達するのでしょうか?当然、人は何らかの感情を持ちますが、それと同時に感覚を切り離した知性(理解)を心がける事が大切です。つまり、感情と知性を区別する訓練です。好き嫌い、都合の良し悪し、正義も悪も、多くの判断は個人的な独自の感覚に基づいています。ですから、まずは物事の状態や情報をそのまま理解するよう努力すべきです。

感情と知性を区別する訓練は、魂に通ずる意識の二重性、冷静な視点を確立する事に役立ちます。魂意識には、少なくとも自分の都合や環境に左右されない「じっと眺めている視点」が必要です。健康は、年を取ると全ての人に関わる身近な話題です。命が関わるので、最も感情が動き易いテーマですから、意志と知性を鍛えるのに相応しいと言えるでしょう。

健康は未来の目標

人間は完全な健康に憧れます。完全な健康は、魂が完全に人格を支配した時与えられるので、人はそれが一つの進化ゴールであると知っているからです。つまり、健康とは肉体だけの問題ではなく、人格全体に、魂の理知性が行き届いた状態を言うのです。その為、永い転生の中で、全ての人が病気になります。それは意識の創造と破壊のプロセスです。

密教的に真の健康とは、超人の域に達した「大師」になって初めて実現可能なものです。人間は、進化した遠い未来、やがて多くの人が健康になると預言されています。しかし、そうなる前には、今わかっている医学的知識を活用し、生活習慣を改める訓練を積むべきです。何故ならその実践が、全ての人にとって、知力と意志の基礎となり、魂とつながる道となるからです。

年齢を重ねると、肉体力が弱まり、長年の意識の結果が表出し、様々な不具合を経験します。それは当然の事でしょう。だからこそ、今まで培ってきた知性と意志を揮わなければ、改善する事ができません。ここが素晴らしい所であり、自分の意識と向き合って、真剣に考えるチャンスとなります。

今、私達は完全な健康にはなれませんが、多くの人が大きな意味で同じ方向を目指して道を歩んでいます。失敗から学ぶ強さ、正確に理解する知的努力、自分を変えようとする意志が、日常生活で確立できると、道は更に開けます。それは、肉体の死を越える魂への道です。

良き目的を持ち、社会に貢献する為にも、健康は大切な要素です。決意するのに遅すぎる事はありません。健康とは、意識活動の結果です。昔から説かれているこの原理を、改めて真摯に受け止め、どんな人にも意識の改善が求められている事を理解して下さい。

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