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手紙:2023-01-13

勘と自己訓練

第六勘とは

物事を理解したり、習得する時、その人の勘の善し悪しによって、大きな違いが出てきます。勘の良い人は、人の説明や状況を的確に把握し、自分にも事態にも、上手に対応する事ができます。そんな時、私達は知性が高いとは言わず、「勘が良い」と表現する事があります。「勘」とは何を表すのでしょうか。

「かん」には、「」と「」の二種類があります。心の感覚、感情や本能、肉体的な五感覚を主体とするものは「感」ですが、それ以上のものには「勘」を使います。この二つの区別がわかると、個人の進化が目指している方向がわかります。今回は「勘」とは何か、どうしたら勘が良くなるか、進化とどう関係があるかを探ってみたいと思います。

一般的に使われる第六感は、予感や見えない霊との交信など、霊感的感性を指す傾向があります。しかし神智学では、それとは異なる第六勘が「勘」です。これは「体と心と知性」の三つが、一つに統合され、融合して生み出された人格の総合的意識です。つまり勘とは、肉体、心、知性の三つが充分発達した上で、更に統合された意識なので、単独の心や知性よりも、高い次元の総合的な判断をする意識です。

統合された意識の特徴は、①三つの意識が同じ方向に集中し働いている、②三つの世界の情報を総合的に使える、③自分を支配する力がある、と言ったものです。例えば、心が突出している感は、霊媒や感覚的な芸術家、同情深い人などにみられます。ある特定のセンスはありますが、情報収集や分析する知性が欠けていると、独特で固有の思い込みになる可能性があります。その為、解釈が偏って特殊になるのです。

自己訓練と支配

また、知性が高くても、勘が悪い人はいます。知性の単独意識で、体や心の意識が連携していないと、総合的な情報がかなり欠けているので、「頭はいいけど勘が悪い」と言う表現となるでしょう。つまり勘が良いと、自分の三体を使って、最も多い情報を収集し、幅広く総合的に判断できるようになるのです。そうなると、状況を素早く把握し、意味や原因まで理解するので、様々な事に対応できるでしょう。

ではどうしたら、勘が良くなるでしょうか。これはどんなに知識を学び覚えても、得られる能力ではありません。最も重要なのは、自己支配の訓練です。目的に向かって、体も心も知性も集中させ、働かせる実践が重要です。この訓練を続けると、人は自分の三体にどんな性質や才能があるか、どう扱うべきか、何が邪魔して失敗するか、どうしたら早く上手くできるかを体得して行きます。こうして自分の扱い方に慣れてくると、目的に対し積極的に取り組み、いわゆる「乗っている状態」、時間が速い意識レベルを獲得し、物質界に対処する人格としては、最高の能力や意識を達成するでしょう。

次に、人格が一つに統合されると、人は今までと違った次元のエネルギーと接触する可能性が出てきます。それが魂です。魂の与える直観は、論理を超えています。何故そんな事がわかったのか、どうしてそんなアイディアが生まれたのか、論理を超えた包括的で正しい意識が生まれてくるのです。これこそ、真の勘、魂が与える直観です。しかし、そこに至る為には、自分を支配する相当の訓練をしなければなりません。反対を言えば、勘が悪いと言うのは、体と心と知性がバラバラで、自己支配がまだできていない状態と言えるでしょう。

勘が向かうべきもの

さて、ここで注意すべき点があります。努力して特定の才能と勘を身につけた人でも、それに甘んじていると、反対に勘が悪くなる場合があると言う事です。自分が体験した努力や成功、知識だけが全てだと思い込むと、それ以外の事を認めない、いつも同じ事ばかり言う頑固な人になります。これは勘が固まって形骸化したケースです。

年齢を重ねると、このような事が起こり易く、生き生きとした勘が、いつの間にか決まりきった頑固な意識活動に変わっていき、もはや力ではなくなっていくのです。勘は、年齢や体験、才能に関係なく、向上と自己訓練をやめた時、勘ではなくなる可能性があります。一時期、勘を得た人でも、同じ才能ばかりを使い、新たな自己訓練を怠って油断すると、意識活動は低下していきます。

では、勘を停滞させず、進化させるには、どうしたら良いでしょうか。訓練された人格の勘は、魂に向けるのが進化の方向です。元々人格は、魂が光を伝達する為に創った道具です。一度は完成した人格の意識も、魂の光を受けると、光と統一する新たな訓練が始まります。光は、段階的に融合していくので、訓練はずっと続く事になります。つまり、人格統一で得られる勘は過程であり、最終目的ではありません。

しかし、一旦人格を支配して勘を得た人は、その力を揮う事に夢中になります。勘を使えば、人の利点や欠点を理解し、問題を指摘できるので、充分有利な立場に立てます。しかし、向上心を怠り、魂を求めないと、勘はそれ以上進化しません。わかる範囲も限定され、やがてエネルギーも枯渇してきます。自分の力に溺れると、意識の進化は停滞してしまうでしょう。

魂との統一

勘を進化させるには、意識を物質界と自分から引き上げて、もっと高い次元の世界に向ける訓練が必要です。これが瞑想、祈り、魂との接触です。魂の方向に意識を向ければ、勘はその光を掴むでしょう。元々人格の統合された意識は、その為にあるので、「謙虚さと高い想像力」を使えば、必ず別次元の世界があると気づくはずです。そうすると、新たな探求が始まり、勘と言う意識は、全力で魂と接触しようとするでしょう。

第六勘は、この世で力を揮う意識です。しかし、それは魂の計画を理解し、世界に奉仕する為に使われるべき意識です。勘は魂の光と混ざり合う事で、次元を変えて広がり、高まっていくので、人類、地球、太陽系、宇宙へと拡大し、完成や終わりと言うものはありません。

さて、真の指導や教育とは、魂と繋がった第六勘を通して広がる光の影響力です。それは単なる知識や技術の伝達を越えた力で、自己訓練を達成した人、魂と接点を持つ努力をした人々から、広がっていきます。私達は自分の訓練を忘れ、人や状況を支配しようと夢中になり過ぎていないでしょうか。磁力の無い知識や正義を一辺倒に語り、自分にも人にも押し付けていないか、点検してみる必要があるでしょう。

真の奉仕をする為には、常に生き生きとした勘が働く自分を準備しなければいけません。年齢を重ねて、体が衰え、心の欲望が死んでも、魂との接点があれば、勘の進化は続きます。それが成長した人の価値であり、世界に役立つ智恵を生み出すのです。進化した人類の勘を、魂の直観に変貌させる事は、これからの人類の課題です。その光は自分自身を真に救い、人々に輝かしい未来を見せる事ができるでしょう。

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