Letters
手 紙
手紙:2017-03-10
意識の壁を発見する
固定観念と壁
20世紀の終わりにベルリンの壁が崩壊した事は、歴史の一大変化でありながら、一昔前の事のように考えられがちです。しかし歴史を振り返ると、嘆きの壁、万里の長城、城の要塞、国境の壁の建設、あるいは領土問題の対立など、国際事情は「壁」による衝突を続けています。私達は壁が象徴する意味を理解し、世界精神がどこに向かっているかを考えなければなりません。では壁とは一体何を象徴しているのでしょうか?
皆さんが自分の家の周囲に高くて頑丈な壁を造るなら、それはどう言う理由によるものでしょうか?昔の城壁と同様、「自分と家族を守る為」です。つまり壁は意識の自己防衛が形になって表れたものなのです。そして自己防衛は、「固定観念」や「頑固さ」、つまり意識の限界を表しているのです。固定観念の壁は、個人の進化にとっても、人類全体にとっても、愛の発達に大きな障害となります。このテーマは時代精神と共に、よく理解すべき深い問題でしょう。
人間関係の中で色々な話をすると、その人の決まり切った結論があり、話の融合や調節、次への展開が起こらずに終わってしまう事があります。「これは駄目、あれは受け付けられない。それは低級であれは素晴らしい‥、それはあなたが悪い」、このような言葉を言われると、それ以上の話の展開は起こらず、その結論以外の可能性を考えようとしません。そうなると、思考の土台となる関係の広がりがなくなり、知的な理解が進まない、つまり知性が限界を受けるのです。
しかも壁を一旦造って、どこか壁に亀裂が入ったり、壊れかけたらどうなるでしょうか?誰も攻めてくる訳ではないのに、それ自体が恐怖に思えて、その箇所を修復したり、強化する事に必死になります。終いには壁を守る事が使命のようになり、固定観念は益々強くなっていきます。頑固な人が自分の考えを崩されそうになると、意固地になったり怒ったりするのは、壁の確保と強化を行っているからなのです。
世界情勢と個人の関係
さて、壁がずっと存在していると、一体どう言う事になるでしょうか?壁は人から中が見えないのと同時に、中からも周囲が見えなくなります。その人はどんなに色々な経験をし、人に会って話をしても、壁と共に移動しているので、変化を起こす経験の材料が入ってきません。寧ろ入ってくる事を避けているのです。こうなると、人は他人にも本質的に興味を持たなくなります。考える材料が無くなり、疑問を持って思考する必要や差し迫った問題を、感じなくなります。他の人や世界から分離しても、特に違和感を感じないまま、益々意識は孤立していくでしょう。
意識の壁は誰でも持っているものであり、それを気づき、破壊して突破していくのが、人間の進化の道です。しかし自分では気づきにくい問題点で、どう考えようと本人の自由だとも言えますが、一人一人の壁は、国や世界情勢に影響を与えています。小さな壁が無数に集まって蓄積され、大きな塊となって、民族や国家のぶつかり合いと言う象徴的な出来事となって表れるのです。人類的な出来事の土台になっているのが、一人一人の「分離の壁」なのです。
分離と自己防衛によって、考える事が怠惰になり、自己満足、他人への無関心や優越感と言った愛と反対の態度が生まれます。家族や誰かを守る事は大切な事ですが、それが意識の限界点にならないように、気をつけないといけません。愛情があっても、それに囚われ、敵対や無関心などの壁ができると、真の愛が薄い人となってしまうのです。
進化を促進する愛
愛は進化を促進するエネルギーで、現在の太陽系のテーマです。実はとても高度な意識活動なので、まだ私達にはよく理解できていません。そう学びながらも、殆どの人は、自分は愛が薄い人間だとは思っていません。皆それぞれに自分なりの愛情があり、愛する対象に尽くし、依存しているからなのです。
愛は個人的な出来事には、あまり関与しません。人類、自然界、地球と惑星、人類の意識(魂)など、グループ単位に働く法則や関係性を理解する高度な知性なので、個人的な生活から、意識の対象を大きな単位に向けていく必要があります。
その為、私達は愛を深める為に、当面「人類」と言う考え方が必要です。個人の生活の責任を果たすと同時に、社会問題や国際問題に目を向け、周囲の人々が何を考え、どんな生活をし、何に困っているかなど、人類として繋がっている人々に関心を向けるべきでしょう。
私達は周囲に無関心になっていないでしょうか?以前と比べてどうでしょうか?年齢を重ね、自己防衛が当然になっていないでしょうか?常に新鮮な目で人々と接し、意識の交流が起こっているでしょうか?善悪や好き嫌い、美醜などで物事を決め付けていないでしょうか?考える事が面倒になっていませんか?自分の考え方や固定観念、パターンを打ち破る為に、挑戦する気持ちを失っていないでしょうか?以前出した結論や考えを訂正する為に、再び考え直す事ができますか?新たな目で自分自身と環境を素直に考えてみる事が必要です。
国際情勢を考える
私達は子供時代、あるいは殆どの子供は、政治や国際情勢に興味がありません。子供は個人が成長する時期で、意識が自分に向いているからです。同時に、関係を理解する意識の拡大や実際的な想像力が成熟しないと、興味が持てません。ところが最近、そう言っていられない国際情勢や政治状況が起こっています。時代精神が、人類一人一人に、どう考えて、愛を実践するか、挑戦させているからです。
現在の国際情勢は、どのような問題も「愛情や優しさ」では解決できないものばかりです。寧ろ愛情と優しさによって行った事が、相手の悪知恵に利用され、悪を増長する結果を招く事すら起こっています。今までの知性では、関係を修復できない壁、限界点に至っているのが現状です。
愛は穏やかで暖かいイメージが強いかもしれませんが、進化する為には、障害となっている壁を破壊し、浄化する力を持っています。人類の自由で生き生きとした知力の発達、融合しようとする愛の本質を妨げるものに、一撃を加えるのです。
このような激震が走る時、小さな壁の中に住んでいる個人の生活も、大きく揺さぶられます。実際に今までの生活を維持できなくなるだけでなく、考え方を変え、その変動に適応する過酷な訓練をさせられます。何故この事が起こったのか、その意味は何なのか、壊された壁は一体何だったかを考えなければ、ただ悲しみと怒りに翻弄される事となってしまうでしょう。そのような時こそ、神の愛とは何か、人間の進化とはどのようなものなのかを考えるチャンスとすべきでしょう。
世界の壁は一体どうしたら崩壊するのでしょうか?それは世界情勢を考えると同時に、地球の細胞である私達個人が、自分の中にある分離の壁を一つ一つ破壊していく努力にかかっています。同時に祈りと希望を通じて、宇宙的な愛の主の力を借りる事ができるでしょう。気の遠くなるような長い年月の間に、蓄積された憎しみや憎悪、恐怖を破壊するには、宇宙的な愛の破壊力が必要です。人類の呼びかけと努力、そして愛の主の協力によって働く事ができる時代、それは魂との関係が樹立できる時代です。
たった一人の一つの壁の崩壊によって、世界に連鎖が起こるかもしれません。名も無き普通の人々の間から、世界中で連鎖的に起こる愛の浄化によって、大きな壁は力を失い、大惨事を防げる可能性があるのです。その一人があなたではないと誰が言えるでしょうか?どんな小さな壁であっても、その崩壊から新たな創造が始まるなら、私達は世界市民の一人として、勇気ある一歩を歩み出すべきなのです。