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手紙:2019-08-09

魂意識と責任感

善意の輪

今年に入り、国際関係が揺れています。国や民族の敵対や憎悪がかき立てられ、世界中で不安が増幅しつつあります。しかし同時に、かつて無い規模で、人々の善意が呼び起こされているのも事実です。災害や大きな事故が起こる度に、善意の輪は一層広がるようになりました。

善意と言う意識は人間の中に埋め込まれた魂意識の表れです。たとえ自分が損をしたり犠牲になっても、他の命を助ける為に何かをしたいと言う衝動です。衝動とは、考えて湧いてくるものではなく、突き動かされるような意識です。災害や悲惨な事故が起こると、多くの人が「何かしないではいられない」衝動に駆られます。善意は、魂意識への最初の応答なのです。しかも、これ程多くの人類が、同時に善意を表し始めた事は、歴史上初めてです。世界には一見悲惨な事が多いようですが、意識の進化から見ると、素晴らしい事も同時に起こっているのです。この事実は私達を大変勇気付ける事だと思います。

更に、善意が知的に発達すると、「責任感」が生まれます。責任感は、知的な考えと対処を伴うので、人が「魂意識に目覚めているかどうかの基準」になります。最近の政治家は「政治責任が果たせていない」と言われます。不退転の決意で「頑張る気持ち」はあっても、政策や実行力などの知的能力が充分表現されていないからです。つまり責任を果たす為には「考える知性」「結果を出す行動」が必要です。今回は、魂意識の印である責任感が、どのように生まれ、いかに果たす事ができるかを考えていきたいと思います。

公的関係と責任感

「現代は責任と義務の時代」と言っても過言ではありません。家庭、市民、組織、仕事など、誰でも何らかの責任が問われます。そして、責任を感じ、果たすようになると、人は大人になったと言われます。では、責任感とは自然と湧いてくるものなのでしょうか?私達はいつから責任を感じるようになったのでしょうか?

責任や義務と聞くと、我慢やストレスの元のように感じますが、それは「公的社会的感覚」と関係があるからです。たとえ気が進まない、やりたくないと言う個人的感情があっても、公的には果たさなければならないのが責任です。つまり責任とは、個人を越えた「より大きな環境」を意識し、その中の関係において自分が果たすべき役割を理解した時、芽生えると言えるでしょう。利己主義とは、自分と言う単体の環境に生きており、どの環境も自分の立場から考え、自分を中心にした関係しかありません。自分が周囲とどう結びついているかを理解するからこそ、求められる役割の重要性がわかり、責任感が生まれます。つまり、関係性の広がりと、正しい役割の理解から、責任感が生まれるのです。

家族の一員、ある組織やグループの一員、国家の一員、人類の一員、地球生命の一部など、公的な関係は小さな世界から宇宙的、霊的な世界まで果てしなく広がります。その人の意識に応じて、理解できる世界の広さや深さは千差万別です。

愛から責任感が生まれる

さてここで、私達は何故責任感が魂意識の印なのかを理解できます。「正しい人間関係」は、愛のテーマであり、関係の理解は魂の理知的表れです。元々、世界には関係の無いものや人などはありません。その繋がりや相互作用を発見し、理解する事が知的な愛の働きです。互いに関係があり、支え合っている命であるなら、助け合うのは当然です。この「事実」を認識する事から責任感が生まれます。責任は愛から生まれる、その発見が広がれば広がる程、人の魂意識は成長したと言えるのです。

人生を思い返してみると、私達は様々な失敗を経験しています。実は全ての失敗には、何らかの「関係の悪さ」が関わっています。才能が無かったとか、あの人が悪かったなど、要因は色々あるでしょうが、関係の良さこそが、全ての才能や特質を最大限に引き出す力です。もし人が、それぞれの特質や才能を最大限に発揮できれば、失敗の度合いは全く違ったものになります。その鍵を握っているのは、関係している人を知的に理解する愛の深さです。

東日本の震災後、一年を象徴する言葉として「絆」が選ばれました。絆とはまさに「関係=愛」を示す言葉です。たとえ血の繋がりはなくとも、地上に生きる人類として、お互いを支えて助け合うのが「自然」の法則です。このような見えない関係を感じ、知的に認識する力こそ、魂意識です。そして私達は関係を理解する事で、正しい進化の方向を見つける事ができるのです。

私達は同朋愛を学ぶ為、自分に尽くすように、他人に尽くす必要があります。魂世界の実現は、愛のネットを土台として地上に表れるので、同朋愛を広めていく努力が、現在の私達に求められる急務の仕事です。

善意を引き出す

その実現の為に、日常生活のあらゆる場面で、自分の中から善意だけを引き出すよう決意して実行すると、素晴らしい力を発揮できます。また善意に基いて、物、金、時間、情報、知識、能力など、できる限りを分配し分かち合うよう実行すれば、人類は遥かに健康になれるでしょう。不健康とはエネルギーの循環が悪い為起こる現象です。現在のように経済がうまく循環していない状態は、意識の不健康を表しています。不健康の種が人間の強欲や敵対から生み出され、経済の不均衡を生み出し、これが肉体的、心理的、メンタル的不健康の大きな原因となっているのです。私達は分配と分かち合いを実践し、関係を改善する事で、世界をもっと健康にし、苦しみを減らす事ができるでしょう。

また、接する全ての人から善意を引き出す為には、どのような言葉を選び、どのように行動したら良いか考えるようになれば、飛躍的に知性が進化します。相手の間違いを指摘したり、物事を改善する事は大事ですが、攻め立てて批判する事で、憎しみや恨み、対立をかき立てる事は、例え論理的に正しくても、良い結果にはなりません。相手の状態を思いやり、言い方や表現の仕方、最も受け入れ易い方法を選択するのは、関係を維持する全ての人の責任です。どの人にも、どの生命にも、光の種が埋められています。植物の種が太陽の光によって育っていくように、光の種を引き出すのは、私達の善意であり、また相手から引き出されるのも善意です。

人類は互いに、そして自然界に対して、魂に向かう善を引き出す責任があります。これが全ての人の共通した使命です。私達が自分勝手な感覚を無視し、いかにして相手の善意を引き出すか、その目的や表現について、「知的に考えるように」努力すれば、自分も周囲も飛躍的に進化するでしょう。

私達の目標

このような事に集中する事で、自分の感情や無駄な考えから自由になり、自分を支配する事にいち早く成功します。善意をいかに知的に表現していくか、これこそが我々の考えるべき事柄、努力すべき目標なのです。

私達は新しい精神的文化を極める為に、これからもあらゆる角度から破壊を経験し、改善を余儀なくされます。その度に、愛が分断されている場所を発見するでしょう。それは世界の病苦を発見する作業に似ています。病から意識を改善し成長するように、問題や失敗から、良いものや改善も生み出す事ができるはずです。病気を治すように、人類は善意と知力によって、絆の分断を癒す事ができるのです。善を積み重ねる事で、多くの光が呼び覚まされれば、全体の状況は必ず良い方向に進むでしょう。

地球の未来を選択するのは私達一人一人の考え方にかかっています。世界情勢が危うい今こそ、命ある者としての責任感を持ち、善意を選択するべき時がやってきました。責任感があれば、私達は冷静に考え、善意から最善の策を実行できるようになるでしょう。敵対と憎悪に意識を奪われる事なく、自分の周囲から善意と責任感を広める運動、始めてみて下さい。

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