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手紙:2019-07-12

現代人と恐怖心

私達は何と闘っているか

最近、以前より憂鬱や不安にかられる事が多くなった人はいませんか?何故こんなに重い気分になったのか、ふっと気がつくと心配で一杯になり、止めようとしても止められない。周囲にもそんな人が増え、うつ的な気分が強まっているように感じる方は多いのではないでしょうか?

近年は自然災害が多く、多くの方が大変な生活を長期的に強いられています。年金の問題から老後に不安を感じたり、隣国との関係や、世界の情勢を考えても、道筋が不透明です。「私達の生活は、未来は、どうなるんだろう?」と考え出すと、誰もが不安を感じる事でしょう。

世界を震え上がらせたアメリカの同時多発テロですが、「テロとの闘い」は、実は知性が発達した現代人の精神的な問題を象徴しています。「テロ」とは「恐怖」と言う意味があり、人類全体が、内面から湧いてくる「精神的恐怖と闘っている事」を表しています。

恐怖は生命の本能でもありますが、時には人間の進化を阻害する最大の原因の一つです。心配と恐怖に苛まれると、持っている美徳が台無しになり、人生が破滅的になる事さえあります。日本は平和であるにも拘わらず、個人が抱える恐怖感は、依然として強いままです。平和なのに何故恐怖が消えないのか?今回は心配や恐怖とどう向き合ったらよいか、人類全体として、何を心がけたら良いかを提案したいと思います。

知性で増幅される恐怖

恐怖とは一体何でしょうか?それは地球自身が根本的に抱えている意識です。恐怖の根源は残念ながら私達の知性では、完全に理解する事はできません。しかし人類は地球の一部として、その意識を含んで生まれ、共有しています。古代、人類の知性が未発達な頃は、生命反応の単純な恐怖と、漠然とした恐れを抱いていたに過ぎなかったでしょう。

ところが、心力と知性が強化され、想像力が発達するにつれ、長い歴史の中で、恐怖は膨大に強められ蓄積されていったのです。つまり、私達は人類全体でつくった恐怖心を、皆で共有する事になったのです。だからこそ、全ての人に強い恐怖があり、簡単に伝染し、周囲に蔓延するのです。

震災や豪雨のような災害で、悲惨な想いが集団的に発生すると、それは空気のように国を覆い、敏感な人々の心に浸透します。理由なく憂鬱な気分や落ち込み、やる気の無さが沸き起こり、無防備で鋭敏な感性を持った人々、不安定な心に伝染し増幅されます。私達は空気のように、様々な意識を無意識に分かち合っているのです。

この種類の恐怖は、主に人の感性から忍び込んで、その人の弱点を強め、心配や怒りを増幅させます。実は先に不安が起こり、後から個人的理由に結びついて、焦点が決まるとその人の中で広がり始めます。そうなると、雲を追い払う光から、意識が遮断されてしまうのです。知力の高い現代人は、プライドや過去の経験から、悪い想像力を膨らませて、周囲まで巻き込んで、自分の心や体を押しつぶしてしまうのです。知性は心力より高いレベルの意識なので、焦点化し易く、現実化する力を持っています。私達は余りにも無防備に恐怖について考え過ぎているのです。

恐怖を越える知性の働き

恐怖を増強させるのが知性なら、心を制御し、超えるのも知性の働きです。恐怖を超える為には、魂の観点が必要で、それを論理的に解説するのが知性です。魂は肉体から自由な次元に生きており、人格から比べると無恐怖の世界に住んでいます。しかも「地球全体の生命は、確実に進化している」と言う事実を知っています。ですから、悲惨な事が起こっても、それはプロセスであり、必ず意味を理解するので、未来の到達点がぶれる事はありません。また命が失われても、魂意識が消滅する事はなく、自然も人間の生命も、必ず再生する事を知っています。

私達は本来魂からやってきた意識であり、ここに意識の焦点を置くと、恐怖を感じる事はあっても、未来に向かう信仰心が失われる事はないのです。信仰心とは、恐怖に駆られて助けを求める叫びではなく、未来に対する進化への確信と言えるでしょう。このような魂の光をキャッチして、自分と周囲を納得させるのが知性本来の役割です。

ところが、現代人は知性が個人的な人生に集中している為、自分が人類全体の一部である全体認識が欠けています。自分一人だけが大変な目に遭っていると思い込み、恐怖が募っていくのです。その時、意識は「私」が「全体」から分離しています。個人に重きを置き、全体から切り取った個人の人生と利益に意識を置き過ぎると、知性は不完全になり、恐怖は益々募ります。私達は、知性が発達しましたが、知性の使い方に誤りがある為、大きな恐怖に苦しめられる事になると言えるでしょう。

分離が恐怖を生む

人間の知性は、魂の思想を解説し、自分と周囲に伝達する、理性の光を分配する為に与えられたものです。あるいは他の人々の苦しみや問題を柔らげ、解決するのが役目です。魂を解説する知性には、必ず魂の光がさすので、恐怖が湧いても、追い散らす事ができ、絶望から立ち上がる事ができるのです。

ところが全体の進化を無視し、自分だけの生活や将来に意識を限定したり、独自の勝手な想像や心配を頑固に考え続けると、知性は魂と分離し、光が途絶えて恐怖に包まれます。法則に合わない知性の使い方をするので、全体から分離する陰が侵入し、恐怖に襲われてしまうのです。

また、短い時間の中の出来事を、結論や終焉として捉えてはいけません。自分の意見を絶対的に正しいと断定し、自分と周囲の意識を縛ってもいけません。私達はどんなに頭が良くても、地球進化の全貌はわからない事の方が多いのです。自分の小さな考えより、地球の大いなる頭脳と愛を信じる謙虚さと、信仰心が大事です。私達は優秀であればある程、人類の一員であり、地球生命の一部であると言う理解を深めるべきでしょう。それが、恐怖や心配から、意識を守る秘訣でもあるのです。

意志の発動

知性が発達し敏感な感性になりつつある今、私達には次のような意識が絶対的に必要です。「恐怖に意識を委ねない」、そして「私は少なくとも、恐怖を増幅する人間にならない」と言う決意です。これは感覚に任せて自然に待っていても達成しにくい意識であり、確固たる意志の発動が必要です。恐怖が侵入した瞬間を注意深く識別し、その感覚に身を委ねてはいけないのです。

これは恐怖の原因を考えないとか、同情するなと言う意味ではありません。世界に貢献する為には、問題に立ち向かい、知的に考える事が重要です。その時、意識に光を含んでいるか、恐怖の陰をベースにしているかを注視する必要があるのです。良い判断、賢明な思考は、恐怖に突き動かされるものではなく、希望と光を含み、建設的な未来に向かっていくものです。

魂の見つめている未来は、常に光です。私達は自分の意識から、できるだけ恐怖の波動を追い散らさなければなりません。このような時代、精神界の恐怖を打ち消す光の意識が、全体に対する限りない奉仕を生み出します。明るく柔軟で楽観的、しかも知的な理性が、周囲を照らし世界を正しい方向に戻してくれます。私達は毎日、どんな場合にも、光に満ちた提案を考える努力をすべきです。これがどんなに自分と周囲を変える威力があるか、その良き影響力は計り知れません。この試みを多くの人に実験し、協力してほしいのです。

私達が闘っているのは、壊れゆく外の物質界ではなく、自分の中からやってくる恐怖です。魂を求めれば、全ての人にその救世主である光は見えてきます。地球の生命も人間の魂も不死であり、どのような苦境でも、人類全体で進化し、再生し、命を繋ぐ事ができるのです。このような意識を毎日実践する事で、人はやがて魂と一致した考えを持ち、恐怖に屈しない光の戦士となるでしょう。

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