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手紙:2019-09-27

審美眼の見つめるもの

心配と物質主義

コマーシャルで、「うつは誰でもなる病気です。うつかな?と思ったら、お医者さんに相談」と言う呼びかけがあります。うつ病や不安神経症。パニック障害など、精神的な病は現代の特徴でしょう。精神的不調のきっかけには大抵「心配・不安」があります。想像力が悪い方向に働くと、心配になりますが、心配は私達の生命力を衰弱させます。ずっと続けていると、免疫力が弱り、あらゆる病気の源にもなります。

心配、不安、怒りなどネガティブな心理状態は、正常な生活や健康を乱すばかりではなく、進化の面から考えても、どうしても克服しなければならないものです。今回は、心配の原因を少し違った角度から捉え、心配を少なくする生き方のヒントを考えたいと思います。

皆さんは心配する時、何故心配しているのか、考えた事がありますか?心配している時、私達はよく「こうなったらどうしよう?」「そうなっては困る」と言います。これは結果について想像し、想いがそこに集中している時の言葉です。つまり心配は、結果だけを重んじると、起こり易いのです。

物事は大きく分けて、結果を扱う物質主義と、結果を生む原因の意識を扱う精神主義があります。霊的とか神秘主義と称して、占いや八卦見を好む人がいますが、「どうなりますか?幸せになりますか?」「結婚はうまく行きますか?」「合格しますか?」「金運はどうですか?」など、殆どの場合、物事の結果について相談する人が大半です。このような会話は物質主義に根ざしており、意識を扱う霊的な立場とは違います。

価値観の点検

病気の対策も、病気にならないよう気をつける、なった時は、この薬と食べ物が効く、こうすれば治る、あれが効果的だと言うのは対処療法で、結果を治そうとするものです。勿論重要な事ですが、殆どの病気は意識活動が大きく関わっています。例えば、病気を引き起こす悪い習慣も、意識を変革しないと本当にやめる事は難しいものです。この根本原因を理解して変えない限り、本当の治癒にはなりません。実は、結果について追求し、結果を直そうとしたり、思い通りにしようとすればするほど、心配は多くなります。心配は物質主義が大きな原因なのです。

一方、精神主義、あるいは霊的な学びは、結果から「原因」を追究し、「意識のあり方」を学習する事で、「直接結果を扱うものではありません」。意識を変えれば、結果は変わる場合が多いですが、結果を変える事が論点ではないのです。現在の霊的進化は、意識の理解が焦点になっているので、結果を変える事だけ考えていては、進化が望めません。つまり心配ばかりする意識は、物質主義的な考え方が原因なので、そこを直す必要があると言えるのです。私達は自分の意識が、結果ばかりに向いているか、あるいは結果を生んだ意識に向いているか、この区別を明確にして、価値観の傾向を知る必要があるでしょう。

忙しさの原因

日本の歴史において、今の日本ほど、個人生活が忙しい時代はありません。進化の過程では、知的活動が活発になると、才能が出たり、自主的に目的を決めて働くので、多忙となります。しかし何故、知性が目覚めてくると、人はこんなにも活動するのでしょうか?

知性が発達すると、明確な想像力が働き、結果をイメージする能力が増大します。加えて、物事を具体的に効率良く扱い、描いた通りの結果を出す実力が増してきます。このような知性を「具体的メンタル体(マインド)」と呼びます。勿論、有能な事は大事ですが、これこそが心配を無数に生み出す原因となっているのです。

具体的メンタル体は個性の大きな特徴で、個人の存在意義やプライドと結びついています。自分の描いた結果が最良のものと考えるので、あらゆる手段を使って懸命に働き、邪魔が入ると怒り、恐れ、攻撃するのが特徴です。

また問題に対する解決能力も高くなる為、更に解決、改善に向かって強烈な努力を積み重ね、才能を発揮します。しかし、思い描く結果が物質的なものである限り、この連鎖が止まる事はありません物質は単に意識活動の結果=影であり、無数に変化し、様々な様相で次々と起こってくるからです。その結果を変えよう、思い通りにしようとするのですから、一つ一つの事柄に対する問題意識、心配は、次から次へと起こり、尽きる事がありません。頭脳明晰、才能豊かな多くの人が、戦争のような毎日を送る事になる、これが物質主義の実態です。

スケジュール表を一杯にし、忙しい毎日を送る人、環境を変えても常に多忙となる人は、実は物質的な結果ばかりを追い、価値観がそこに縛り付けられている可能性があります。理想=精神的なもの、良い結果=正義、改善=奉仕などと簡単に片付けて、自分が物質主義であると気付いていない人が多いのです。事実、物質主義と霊的な価値観を区別するには、相当原因を追究して考える必要があるでしょう。

意識変革が目標

物事の結果や表現を生み出すのは、背後に働いている意識です。現在、地球は愛の時代=意識を理解する進化過程を進んでいます。「どう考えるか?」プロセスにおいて何を選択するにも、結果をイメージするのも、その人の考え方が関わっています。考え方が原因であり、原因の世界=意識を理解する事に価値を置けば、結果は二の次になるはずです。結果が上手くいったところで、意識が変わっていないのなら、意味がないと理解できるからです。この価値観の移行こそが、根本的に心配から解放される方法です。

また、一緒に組む人の間で問題が起こる場合、善意や目的が一致して始めた事でありながら、選ぶ方法や描く結果に違いが生じる為に、揉め事が起こります。たとえ正義の主張であっても、否定、攻撃、敵対、競争、嫌悪が自分の中から湧いてくるなら、それは価値観が物質主義に傾いている証です。

この典型的な例が宗教戦争です。人を救うはずの精神的な宗教によって、数々の戦争や根深い対立が引き起こされてきました。動機が神であっても、そこからの展開で、考え方が物質的になる為、物質的な結果や結論にだけ結びついてしまいます。このように、長い間続いている物質的な文化や価値観が、世界に無数の心配を生み出し、多くの人を黒い雲のように襲ってきたのです。今まで心配に加担した事がないと言い切れる人は、恐らく誰もいないでしょう。

私達が学び、変革しようとしている事は、意識です。しかし、ここに到達しようとする前に、意識のあり方を学びながら、いかに自分が物質的な価値観を受け入れているかに、気付く必要があります。何故こんなにも忙しい人が多いのか、その状況を生み出している意識を理解する事が大事なのです。「私は善意で一生懸命働いている。何も悪い事はしていない」と多くの人が思っていますが、進化の観点から言えば、そう言い切れるものではありません。

楽観的な意識に戻る

弟子の条件に「常に忙しい」と言う者は避けなければならないと言う注釈があります。勿論、真の奉仕の為、大きな責任を引き受け、多忙を極める優れた弟子もいます。問題は、何を目指して忙しくなっているか?と言う事です。「暇があればいいのか?」と受け取ると、時間を作るという形だけを変える人もいますが、その考え方自身が物質的だとわかります。言葉が何を物語っているかを理解する=これこそが真の学びです。意味を良く考え、謙虚に、そして真摯に理解すべきでしょう。

心配や不安は、ずっと続けていると灰色の雲のように人の意識を覆ってしまいます。見えるものも見えなくし、積極的で喜びを感じる感性さえ、遮ってしまいます。この雲は、周囲にも伝染し、驚く程簡単に増えていきます。この雲は、人類全体で作り続けているもので、加担した事がない人、責任が無い人はいないでしょう。

だからこそ、今気付いた価値観を考え方に置くならば、灰色の雲の上に意識が浮上し、太陽の光を発見する事ができるでしょう。何故なら、本来意識とは、魂の光からやってきたものだからです。意識が変わる事に喜びを置けば、生きる意味が明確になり、希望を失う事はありません。意識の進化を目指すなら、全ての人が光を求めて一歩ずつ歩めば良いのです。

人間は、本来もっと楽観的な意識を持っていました。私達は成長し、本来の道へと戻る時がやってきたのです。結果は考える材料であり、我々の目を永遠に注ぐべきものではありません。積極的で希望に満ちた意識こそ、灰色の雲を消散する力です。私達の真実を見る眼は、何を見つめているでしょうか。勇気を持って、意識の世界へと参入しましょう。

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