射手座
射手は馬に乗って弓矢で的を狙う人です。馬と人間と弓矢の複雑な組み合わせは、12星座の中でも特異な存在です。実際射手になる為には相当な訓練が必要です。馬を乗りこなし、弓矢を習い、走りながら体の軸を動かさずに集中して的を射る。これは人生を通じて人格を訓練し自分の支配に成功した事を実証するプロセスです。その為、ギリシャ神話では、英雄を育てる優秀な教師が射手座の象徴になっています。独自の信条や正義感で情熱的に活動し、猛烈な勢いで行動する射手座。その人生には深い意味が隠されています。
アッセンダントが射手座の方は、馬で象徴される本能が非常に強くなるので、まずは湧き上がる欲求や感覚を支配して、一貫した方向で行動する事がテーマとなります。しかし本人はそれが本能や勝手な欲求だとは思っていません。後付けの理屈があり、自分では立派に考えていると思い込んでいるので、人の意見は馬耳東風、思いつくまま色々な方向で勝手な行動を取るでしょう。
しかしこの状態は当然社会不適応や周囲とのトラブルを起こします。正義感や自分に対する美意識が高いので、このままでは失敗続き、人の尊敬も成功も得られないと気づくでしょう。行き詰まった状況の中でようやく気づき、欲望=馬を乗りこなす自己制御が始まります。これには論理的で公明正大に考える精神が必要になってきます。
これだけでも充分大変なのに、今度は馬に乗りながら、弓矢を撃つ訓練が加わります。矢の的は、理想や信念、哲学です。射手座は思想、哲学、宗教など、高邁な理念を追求する特性があります。その為、考え方が周囲からわかり難い面がありますが、この人を突き動かすのは、単なるお金儲けや野心ではない、「その人なりの」尊い精神的理想なのです。普通は大人として生きていくと、妥協して失ってしまうような純度の高いものを求め続けるのです。そしてその為に徹底的に身を捧げ、一本の矢となって飛んで行く勇気と行動力を示さなければなりません。これは年齢と関係ない純粋さ、エネルギッシュな若さの秘訣です。
射手座の道は生活全般と人生を通じた長い道のりで試される厳しい訓練です。その為、家庭問題や仕事の人間関係で、犠牲を強いられたり、忍耐力を試されたり、精神的にも肉体的にも苦労に直面する事が少なくありません。馬=欲望や感情が強い為、我慢は普通の人より大きなストレスとなり、体調が狂う事も多いでしょう。
勿論ある程度我慢は必要です。しかし我慢は長続きしません。そこで重要な事は、「合理的に理解する事」です。思い込みや極端な信念ではなく、冷静に考え、周囲の情報を集め、物事の背後にある意味を正しく理解する事が大事です。意味を考えようとすれば、感情や勝手な考えを制御しなければなりません。つまり射手座の自己統一は、意味を正しく理解する理性と、それに沿った行動が取れる人となる精神的訓練なのです。
これだけ苦労した人は、人間の苦しみや悩みを良く知る知恵者となる可能性があります。従って、悩みを教え諭す教師や、困っている人を導いたり、勇気付け率いていく人情味のあるリーダー的な職業が向いています。射手座は熱誠が高いので、思い込んで誤った方向や、特定の人に献身し過ぎ、挫折し、やる気を失う事もあるでしょう。しかし、そこから意味を学習すれば、何もかもが素晴らしい体験となります。この積み重ねによって、人には自分を導く魂があると気づきます。これこそが揺らぐ事の無い信仰と不屈の強さを与えてくれる人生の宝なのです。