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手紙:2016-10-14

力の源泉

変化する事の難しさ

私達は自分を変えよう、進化させようと、本を読み、人の話を聴きながら学んでいます。しかしいざ行動に移したり問題に直面したりすると、実際には力が揮えなかったり、また同じような問題でつまずき、相変わらず感情に苦しむ自分を見て、「わかったつもりだったのに、同じ事を繰り返している。変わっていなかったのか?」と悩むのではないでしょうか。長年学んできたのに、実は自分は全然変わる事ができないのではないか?と疑念が湧きます。これは進化しようとする人にとって、恐怖の一つと言えるでしょう。

向上する意志がある人にとって、人格を魂に沿って変えていく事は憧れであり、必要な事です。しかし、真に変わる事は中々難しく、魔法のように一瞬で変われるものではありません。今回は進化に従って「変わる」と言うのは、どう言う事なのかを考えてみようと思います。

さて、皆さんは日頃子供や仕事の指示で「ああしなさい、こうしなさい」と言う方ですか?問題が起きた時、「じゃあ、どうしたらいいですか?こうですか?ああですか?」と聞く方ですか?あるいは問題の責任や理由を問われた時、「それはあの人がこう言ったから。以前こう言われたから。その時こんな事が起こったから」と言うような説明をする傾向がありますか?

これらは良く聞く言葉ですが、その時は考えて言っているのではなく、反射的に言葉を返しているに過ぎません。既に決まっている事をマニュアル化してしゃべっている、考えずにすむ最も効率良いものを聞こうとしている、自己防衛で人のせいにしようとしている…。この中に「考える」「理解する」あるいは「観察する」と言う意識活動は入っていません。

反射的行動はその人の思考を通っていないので、エネルギーの観点から見れば、進化に必要な知的エネルギーを殆ど使っていないのと同じです。日常生活で処理は必要ですが、一旦自分の中に取り入れてから、考えて出しているものではないので、霊的化学変化が起こらないのです。また、自己防衛は、本能的に反発する感情なので、これも知的に考えている作業ではありません。

私達の会話は、殆どが反射的なものです。自分の中に取り入れて、知的エネルギーで消化して出す意識活動は、本当に僅かしかありません。知的エネルギーは、霊的な強い火に例えられますが、変化する為には、人格の中に火が起こらなければ、内面を変える力にならないのです。つまり、私達が変わらない理由は、自分を変えられるだけの強い火が不足しているからなのです。

知性と料理

人間は火を使って料理をします。料理は知性ある人間の証とも言われ、しばしば霊的な例えにも使われます。相手に合わせて自分の技量を揮い、素材を美味しく料理すれば、素材以上の味を引き出せます。

料理は意識活動の原理を象徴的に表しています。情報、知識、現象、言葉は材料です。そして火を使う料理の工程は「考える」「理解」にあたります。火を使う事で、材料は一つのものになり、別の味になります。情報や知識は考える火によって、別の答えに導かれます。

マニュアル通りに材料を組み合わせるように、ただ覚えた知識や情報を伝えたり、方法を実行したところで、形はできても、その人自身の考える力=火を使わなければ、中身が一つに融合しません。表面的な知識や一辺倒な対処では、その人独自の火が使われていないので、別の答えが導き出せないのです。たとえ見栄えや形が良くても、美味しいものになっていないので、相手を温め感動させる事もできません。その為、絆を繋いだり、影響を与えたりする力がないのです。自分の中でも火を使っていないので、エネルギーは生まれず、何かが融合したり、浄化される事はありません。自分にも影響を与える事ができない、つまり何も変化していない事になるのです。

私達は毎日、毎秒どのような料理を出しているでしょうか?差し出すどころか、素材を相手にそのままぶつけて返すような事はしていませんか?全く手を入れずに、素材を皿に載せ、右から左に移動させていませんか。この点をよく振り返って、毎日自分が経験し、考えているつもりの意識活動を分析してみて下さい。そうすると、殆ど料理していない事がわかります。これが変われない原因なのです。

火を生む原理

人間は二重の意識を持っています。環境に反応する外向きの意識と、魂と向き合う内向きの意識です。生まれてしばらくは外界の世界と接触する五感覚が育つ為に、環境に激しく反応しながら成長します。しかし、次第にその人独自の内的意識空間が育ってきて、大人へと成熟して行きます。これがやがて考える意識点となり、魂との接点となるのです。

さて、火を生むような考え方は、どうしたらできるのでしょうか。火は、異なる次元が出会う事で生まれます。エネルギーには全てプラスとマイナスにあたる二極があり、人の外界に接する意識と内界で考える意識が、電気の㊉極と㊀極になるのです。ですから当然二点の落差が大きいと、それだけ高圧エネルギーを生み出す事ができます。外界で接触した情報を元に、背後にある原因を追及すると、そこには次元の差が生まれ、火が発生するのです。

そして原因の追究には、更に様々な次元があります。物質的で直接的な次元での原因は簡単にわかり、マニュアル的にも情報的にも調べる事ができます。しかし、これは物質界の情報の突き合せなので、余り落差が生まれません。そこで、意識の中に深く入っていくと、心や知性の次元、魂の次元まで世界は続き、原因の理解は、より広く、完璧なレベルにまでたどり着くことができます。

様々な結果を生む真の原因である意識の世界に入る事で、外界の物質界との落差が生まれ、強い火を生み出す事ができるのです。これが「考える」と言う事です。人を理解する事、原因を追求する事は、自分自身を火の力で変える事になり、当然相手に対する料理も最高のものになるはずです。しかし、それには反射的な意識を抑え、静かに自分の力で考える練習をしなければなりません。つまり、私達は反射的に発言したり、衝動的に動く前に、静かに考える時間を取る訓練が必要なのです。

知識は幾らでも学び聴く事ができますが、力そのものではありません。ですからどんなに学んでも、その人の意識の中に電極が育たない限り、変化する為の火が生まれません。

私達の人生の意味は、この二重構造の意識を使えるよう徹底的に訓練する事です。知識を学んで瞑想をいくら訓練しても、物事に対処する瞬間に、意識が別々、あるいは一つしか働かないのでは、力は一向に生まれません。瞑想を一生懸命している人は、意識の点がバラバラに存在していないか、日常から常に繫ごうと努力しているかどうか、厳密に自分を振り返ってみる必要があるでしょう。

全ての人の使命は魂の計画や目的をこの世で最大限実行する事です。その為には魂と言う高い次元と内的な接点を持ち、最大の火を引き出す必要があります。その火こそが真の意識です。自分を変える為には、強い火を呼び起こして、意識を変える必要があるのです。そうすると、結果的に人格は変化して行くでしょう。

毎日環境に振りまわされ、現象に悪戦苦闘している中で、このエネルギーだけが進化しています。どうか本質を見て下さい。挫折したり問題にぶつかる度に、意味を考え、何故かと深く追求する意識を忘れないで欲しいのです。この純度を失わない限り、人は何歳になっても変化し続け、力を揮う事ができるでしょう。

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