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手紙:2018-01-05

識別力を養う

正しい結果の為に

現在、人類が試されている大きなテーマは、「正しい人間関係」です。その為、個人でも国際関係でも、関係を巡って様々な問題が起こります。以前の時代では、心の発達がテーマだった為、理想を描き、夢に向かって一生懸命尽くす事が美徳とされました。「人間関係」と言っても、相手の心に思いやりを持って尽くす「気持ちの交流」が主体だったと言えるでしょう。これは勿論人間関係の基本ではありますが、現代の私達に求められるのは、それ以上のものがあります。この違いを理解しないと、人間関係では落胆が多くなり、充分な影響力や良い結果が期待できないでしょう。

国家間の外交も、かつてないほど緊密なものになり、民族間、国同士の関係は人類の命を握る重要な鍵となっています。個人から世界に至るまで、関係を正しく結ぶ糸は、生命の行方をも握っています。私達はこのテーマをうまくクリアする事ができるでしょうか。皆さんは「正しい人間関係」を結ぶ為には、一体何が大切だと考えますか?

識別力」、これが現代の「正しい」関係の土台になります。どんなに一生懸命尽くしても、たとえ命を懸けたとしても、間違った方向に、誤った方法で尽くしたら、「正しい結果」が出てきません。家庭から仕事、国家間の外交まで、私達は「責任を問われる」為、良く考えないといけません。その為、正しい識別力が全ての人に試されているのです。今回はその識別力がどのように養われるのかを考えてみたいと思います。

識別の三つの要素

昔から「自分を知っただけ、人の事がわかる」と言いますが、これは真実です。人は知性がある程度発達すると、魂の知的な識別力が伝達されるはずなのですが、これを曇らせ歪ませているのが「我欲」や「プライド」そして「怠惰性」です。私達は自分が関わらない事に対しては、意外と冷静に識別できますが、同じように識別できないのが「自分」です。欲望が最も働いている自分に関して、ありのまま見る事ができれば、この世の殆どの物事が適切に判断できるでしょう。自分を騙す張本人は自分以外にないのです。

識別力を養う為には、何が眼を曇らせているかを知る事が第一です。それには、色々な場面と日頃の態度を「観察・データ化」し、自分に関する情報を集める事が役立ちます。以下の三点は、自分の判断に最も役立つ項目です。

1.「現時点での最高の知力」=これは才能や集中した時に出る能力や特質です。特に知的な集中が、どのような方面に向き易いかを探し当て、最高に表れた状態を捉えます。全ての人には魂の知的な種が植えつけられており、それが今どのくらい育っているかを見るのです。特質を特定し、更にその最高状態を長く維持できるよう努力すると、最高のレベルは更に次の段階に進むでしょう。

2.「困難に出遭った時の態度」=最悪の事態に、意識がどの程度乱れるか、あるいは冷静でいられるか、それが公的な仕事や周囲にどのくらい影響するかを観察します。この時、咄嗟に何を優先するか、この点を見ると、自分の価値観や限定している要因を知る事ができます。公的な立場を優先するか、私的な都合や自己保存に走るか、その程度と傾向を知っておく事は大変重要です。自己保存は魂と自分を断ち切り、識別力を曇らせる厚いベールです。最も見たくない点かもしれませんが、これを掴めば、何と戦うべきかがわかります。1と2の点を知る為には、目的や責任を持った人間関係の中で活動し、様々な刺激を受けなければいけません。

3.「習慣の態度」=自分が常々どのような習慣や惰性に支配され、生活しているかを観察します。何も考えずに、習慣的に過ごしている時間を計算すると、習慣的に費やされるエネルギーは最も大きいものでしょう。しかもどのような習慣かによって、怠惰性の種類も知る事ができます。必要な場面で、どのくらいの力が発揮できるかは、習慣によって随分変わります。習慣の質を効率の良いものに改善すると、意志が増大し、人生で達成できる事は、数倍にもなるでしょう。

何故この三点が重要なのでしょうか?実はこれらは魂が、人間進化を判断する決定的要素だからです。魂は定期的にこれらを観察し、人類全体を冷静に判断しています。だからこそ、人格がどの程度育ったか、自分を導く識別ポイントとなるのです。

この三点で自分を定期的に検討する事から、物事を客観的に見る練習が始まります。識別が正しくできて、初めて改善の方法が考えられるからです。自分を正しく扱い改善できる人は、他の人や物に対しても、その力を応用できます。そしてこのような見方を訓練しているうちに、いかなる不都合な状態や困難な情況でも、「冷静で平静な視点」から、物事を見られるようになります。

これは全く心が乱れないと言う事ではありません。その事態から離れて「外的な要因に左右されない静かな視点」が、二重にあるかないかの問題です。外界に反応する意識と、内界で魂と接触している平静な意識。自分の中に、この二つの関係ができている人は、内外共に正しい関係を持つ事ができるのです。特に内界との接点は、魂から智恵とパワーを引き出します。魂は、私達に正しい方向を示唆する泉であり、最も正しい識別力を与えてくれるでしょう。

責任感が鍵

以前、人間には考える力が殆ど発達していなかったので、判断は一部の人に委ねられ、大多数の人は知的に自立していませんでした。すべき事と方法を聞き、何も考えずに実行するのが普通だったでしょう。しかし、今の時代、救世主が現れたとしたら、その人は次のような事を主張するでしょう。「あなたはどう考えるか。問題を解決し、自分で夢を実現する努力と智恵を引き出しなさい。冷静な意志で自分自身を導き、世界を救う力を発揮するのです」と。

誰か優れた人に識別してもらう自分から、苦労と失敗を重ね、地道に努力と改善を続け、自分で識別力を獲得する人になるのです。これは、人に代わってもらう事ができず、一定の時間と努力が必ず必要です。魔法のような方法や、一瞬で悟ると言った夢のような事態はあり得ないのです。

「関係」とは、愛の引力です。そして愛とは、執着する愛情やロマンチックな同情ではなく、魂の理性や智恵であり、進化を起こす偉大なパワーそのものです。私達は同情し、慈悲深くある上に、実際的に生命を救い出す智恵を証明する必要があります。これが人間の責任です。関係を理解する愛があれば、自ずと責任が感じられるようになるはずです。

私にはそんな力は無い、失敗して人に迷惑をかけたり、笑われるのが恐ろしい。そう思うかもしれません。自分だけの為なら、それでも良いでしょう。しかし責任を感じた時から、人は自分以上の価値観に目覚めるはずです。落ち着いて見て、考えなければならない。その自覚から、真の信仰が目覚めます。全ての人の中に智恵の種は埋まっていると。だからできるはずだと。それが神の愛の証拠なのです。この種は、それを信じて自ら苦しい努力を重ね、育てる事で開花します。

科学技術の発達により、誰もが世界中で起こる苦痛や困難を知れるようになりました。私達には、自分の周囲を始め、世界を救う協力者になる機会が与えられています。役立つ奉仕をする為には、今自分が持っている最高の力を発揮して、何かを与える人でなければなりません。自分を識別する事は、勇気がいる事です。最高の力を出す事は、大変な事でしょう。しかしそれが人々を救い、世界の役に立つならば、私達はここからスタートしなければなりません。識別力を養いましょう。自分自身が、最初に与えられ、扱うべき実験台です。正しい識別により、自分の中に埋められている神の宝珠は、必ず輝く事でしょう。

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