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手紙:2017-09-08

心の帰る場所

心配の語源

日本は世界の長寿国です。誰もが老後の人生を考え、有意義に過ごす事が課題となっているので、様々な取り組みや工夫が始まっています。同時に、老後の不安や心配も増えています。あるいは現在、心配の連続だと言う人も多いのではないでしょうか。老後のみならず、若い人でも自分の将来を心配し、親は子供の将来を心配する‥。「心配」は、変化の早い時代に生きる私達の心を驚くほど占領しています。「心配や不安」が無くなったら、人はどんなに幸せになれるでしょう。

「心配」は私達にとって嫌なものですが、その語源は禅語です。「心を配る事」が本当の意味で、心を通じて、神のエネルギーを相手に配り、与えると言う禅の行為です。現在私達の使っている心配は、寧ろ「心痛」と言った方が良いでしょう。心痛は自分を痛め、苦しめます。大変なストレスになり、心痛によって様々な病気まで引き起こされます。

心配は、自分を痛めつけるだけではありません。周囲にいる人の心にまで痛みが広がっていきます。心配波長は、誰にでも伝染し易く、そして正常な人の心までかき乱すのです。つまり心配すると、かえって愛する人を痛めつける事になりかねません。愛情があるからこそ心配する、あるいは自己愛から心配しているのですが、事態を改善するどころか、実際は追い討ちをかけるように、心の状態を悪化させている場合があるのです。今回は、「心配」からの解放を、基本的な事から考えてみたいと思います。

リズムと光の調律

心配は、何かを失ったり、あるいは失う予感、悪い事態を想像する事で起こりますが、その根本には自己保存本能が働いています。心配が強くなると、うつ病になったり強迫観念症などの精神的な病になりかねません。最新の研究で、将来に対する不安は、長寿の遺伝子を短くし、病気にかかり易くする事までわかっています。

では、自分が心配になった時、あるいは心配に取り付かれている人に、どのように接するべきでしょうか?原因を追究し、論理的に考え、説得し、相手の考えを変えたり、心配を取り除いてあげようと、あの手この手を考える事でしょう。そのような方法は、心配を取り除くのに効果的でしょうか。

ここで大切な事は、「心配」が「リズムを失った不秩序な波動」であると理解する事です。情緒活動の代表である心配は、自己保存本能から発する妄想や、周囲の刺激によって乱れた波長から起こります。これを最初に直すのは理屈や説得ではありません。接する人々の「安定し調律されたリズムある心」の波長なのです。皆さんは、いかなる不秩序に触れても、自分の心を元の調律されたリズムに戻す事ができますか?この復元力こそ、心配を取り除く力であり、人間の訓練された精神力、あるいは魂の強さなのです。

健康な体とは、何物にも影響を受けない肉体ではなく、刺激を受け反応を起こしても、免疫力や復元力によって、元の正常な状態に戻す力が強い、つまり変化に対応できる体です。これと同様、私達は絶えず周囲から刺激やストレスを受け、自分だけのリズムを保っている事は難しい時代に生きています。その刺激の中で、同調しながらも、元の安定したリズムに調律し、復元する力がある人は、自分の心を支配する事ができ、周囲の人の不調な心を安定した状態に変える事ができるのです。

子供の教育に大事な事

心が乱れた時、シンプルに光や魂をイメージし、安定したリズムを意識してみて下さい。これが心配を無くす方法です。最近では、誰にでもできる方法、呼吸だけに意識を置く「マインドフルネス瞑想」が大ブームになっています。まずは乱れた心配波長から、意識を引き上げる安定した焦点が大事なのです。

問題解決は、心が安定してから初めて正しく思考できるものです。私達は相手の心配を取り除こうとして、怒ったり興奮しながら説得したり、反対に同調し過ぎて自分が意気消沈してはいないでしょうか?これでは自分までリズムを乱し、寧ろ状況を悪化させてしまいます。人の心を鎮めるには、まず自分が沈静した心を保たなければいけません。打ち沈んだ心を軽やかに、安心させる為には、自分の心が軽やかで、光や希望に満ちていなければならないでしょう。そのリズムを記憶、維持するのがメンタリティであり、浸透させるのがハートの力なのです。

子供の正常な成長で一番大切な事は、両親の情緒が安定している事です。どんな素晴らしい教育を受けさせ、必要なものを全部与えたとしても、家族の心が情緒不安定で、いつも乱れたリズムを発していると、子供の心は同様に乱れ、安定したリズムで成長する事ができません。心が安定し、穏やかで透明ならば、子供の心も同じような状態で発達し、希望や夢を描ける心になるでしょう。そして、やがては魂の光を映し出せるように成長します。これが人間の正常な進化です。

どんなに良い教育を受けても、親の心の乱れや心配の影響を受けた子供は、様々な問題を抱えてしまいます。知能が高く、才能があっても、情緒が安定しない為に、知性の発達には限界が出てくるでしょう。更に、心の安定が得られない為、満足や喜びが感じられず、理想や夢を描きにくくなってしまいます。未来は心配で満たされ、やる気が無くなって、社会適応にも問題が出てくるでしょう。

また、心配し過ぎて過保護になり、危ない事を全部避け、自分も子供も守り過ぎると、体や心は僅かな刺激でも過剰反応するようになります。ちょっとした刺激に、簡単に乱れる小さな心は、安定する事ができません。大切な事は、どのような刺激にも適応し、立ち直る事ができる調整力の強さです。その為には、安定した家庭の波動は、心をリセットする拠り所となるでしょう。

人間の成長とは、体の免疫力を鍛えるように、最初は影響を受け、倒れたり打ち沈んだりしながらも、何度となく立ち直り、やがて自分が立ち戻るべきリズムを、手に入れていく事です。人生とは、自分を防御し、大変な事を避ける事ではなく、多くの出来事と経験を通して、強い調律力を手にする訓練の場所なのです。

瞑想の必要性

瞑想は魂や霊と言う高度なリズムを知る方法です。これらは人間のどのような人格よりも、強く高いリズムを持っている為、瞑想で接する事ができれば、私達の人格はその強いリズムによって、完全に調律されます。私達は毎日荒々しく不秩序な物質界に生きている為、安定したリズムを取り戻し強化する為に、瞑想や祈りの行為が必要です。

強いリズムとは、物質的な強さや大きさではなく、高く純粋で精妙な波動の事です。私達はその波動に同調する事で、進化の第一歩を踏み出せます。強い波動は古い殻を破り、新しい自我を誕生させることでしょう。この聖なる波動を周囲に分配する事が、「心配」つまり「心を配る事」であり、その為に地上に生まれたのが、私達人間なのです。

人間は本来魂であり、聖なる強さを持っています。人生の様々な出来事に負けそうになり、怠けたり悲しんだり心配するのは、魂の乗り物である人格であって、本来の自分ではありません。私達が年を重ねて手にいれる素晴らしさとは、権力や名声や財力ではなく、魂の力強いリズムを放つ人格を築く事です。人は魂の高度なリズムと、周囲の荒々しい波動の間で、摩擦の苦しみを味わうものですが、やがては不死鳥のように不死のリズムを持つ人格となるでしょう。

色々な策を講じて、心配を取り除くのではなく、心配の本質を理解して、安定した意識を訓練する事が、老後の一つの意義ではないでしょうか。一人一人の心の平和と強さが実現されてこそ、本当の世界平和が現れてきます。この原理を正しく理解し、私達の中から平和の本質を表し、広げる人になりたいものです。

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