Letters
手 紙
手紙:2018-08-10
リズムと個性
人をどう評価しているか
皆さんは周囲の人に対して、自分がどんな印象や意見を持っているか、考えてみた事はありますか?家族、友人、同僚、上司、市民や国民、人類に至るまで、自分が持っている意見を並べてみて下さい。この事でわかるのは、実は人の事ではなく、「自分の傾向意識」です。何事も否定的、批判的、ダメな面ばかりが浮かんでくるなら、不服が多く、ネガティブな面ばかりを見ると言う意識を表しているのです。
現代は個性が発達する時代なので、知性が目覚め、多くの人が批判的に物事を見る傾向が強いと言えます。これは人類全体の「思春期」に相当し、知性と個性の確立には、必要な能力と言えます。しかしながら、批判精神は個人的な意見であり、人間関係に多くの弊害を生み出し、進化を阻害する要因にもなります。
言葉に出さなくても、批判的な気持ちを持っていると、人間関係は上手くいかず、物事の結果も考えた通りにはなりません。結局後から自分が後悔するものです。もう止めようと思いつつ、それでもイライラしたり、自分が正しいと主張してしまい、同じ事を繰り返すケースは多いでしょう。これを音楽の曲のように、リズムで考えると、自分を変えにくいと言うのは「リズムの変調」がしにくい状態を表しています。今回は、意識変革をリズムに例えて考えてみたいと思います。
批判的精神は、自分の考え方が基準になっています。個性的な人には、固有のリズムがあり、体・心・知性がそのリズムで統一されています。この状態の人は、自分の理想や目的が明確で、批判的、支配的になり易く、他のリズムに反発します。つまり、周囲に対する批判や否定を聞いていると、その人のリズムの特質、壁の限界点、支配の範囲がわかるのです。反対を言えば、人は個性を確立すると、決まったリズムの範囲に閉じ込められると言えます。
個性と限定
リズムが明確な個性が、集団に入るとどうなるでしょうか?固有のリズムは自己保存本能を持っていて、リズムが違う者が近づいてくると、敵対します。同調しないリズムに対してはイライラするので、攻撃あるいは支配しようとするでしょう。つまり個性の強い者は、組織やグループに入っても、自分のリズムを変えるより、リズムの拡大を目指すのです。そして自分を変えなければならない事態になると、破壊的に攻撃するか、離れていくかどちらかになるでしょう。個性的であると言う事は、組織活動をしても、自覚がない限り、変わる可能性が低いのです。それはどうしてでしょうか。
個性的な人は、マインドコントロールと言う言葉で有名になったように、自分も他も、支配し統一する強いリズムがあります。そのような人が、批判や否定的な言葉を発すると、「考える事」と「言葉を発する事」で、リズムは二重に強調されて、周囲に発信されていきます。考える度に、言葉を発する度に、自分自身がそのリズムに波打ち、そして支配の限界まで届いたリズムは、また波のように自分に返ってきます。
これを何回も繰り返していると、そのリズムは益々強まり、自分が正しいとしか思えなくなってきます。そして個性的なリズムが強くなればなる程、違うリズムに同調する能力を失って、結局自分のリズムに閉じ込められてしまうのです。一生懸命考えても、このリズムと壁の中ではエネルギーの交流も量も足りなくなる為、違う考えが浮かばなくなるでしょう。これは進化から考えると、大変な危機状態です。
このような事態を避ける為に、昔から宗教や道徳では、無害な言葉を選び、平静で静かな心や落ち着いた知性を保つよう教えてきました。一旦個性的になった場合、批判的で否定的な言葉を繰り返し、個性をより強調する事は、やがて自分の破滅に繋がる事を、教訓として覚えておくべきでしょう。
進化とリズム
さて今度は、人類より大きな地球存在を、リズムの面から考えてみましょう。地球は全生命を自分の細胞として抱えながら進化している生命体です。地球に存在している全てのものは、地球固有のリズムによって養われています。その統一したリズムの下で、私達人類は他の生命と共に生きる事を許されています。たとえ無自覚であっても、全ての命は地球のリズムによって互いに繋がりながら役割分担して生きているのです。
人間は、進化すると自分固有のリズムを持ちながら、更に高い地球のリズムにも同調する事ができます。これが高級知性の働きで、可能にするものが愛です。このリズムに接すると、一見固有のリズムを持つものも、実は一つの進化の方向に向かっている事がわかります。この事実に目覚める事が、関係を正しく理解する事であり、協力する唯一の思想となります。
これを理解せずに、無理して自分の考えを変えようとすると、抑圧になったり、新たに別の相手との反発を起こします。例えて言えば、横同士の同調は、またその隣と反発する事を繰り返しますが、高さを変えるリズムの同調は、広い範囲を自動的に含む事ができるのです。全生命をリードする地球のリズムに同調できれば、理解や共存は当然の摂理になり、抑圧や強制する必要はなくなるでしょう。
信仰と謙虚さ
ではどうしたら偉大なリズムと同調できるでしょうか?「信仰心と謙虚さ」。これが重要な鍵となります。全ての人が、自分と同じように生きている尊い同胞である事を感じる力、そして全生命を生かしている偉大な地球に対する畏敬、この精神があれば、断定や否定、批判は自ずと少なくなるでしょう。
真の信仰心が厚く、謙虚さがある人は、個性的な力が破壊的にならないよう自制心を持っています。個性が最高のリズムだと思い込んでいると、人は極度に物質的になり、周囲の人とも、魂とも、リズムを同調する事ができません。進化と教育の真髄とは、個性的に育った人格のリズムに、同胞、そして魂とのリズムを同調させる術を教える事です。
自分がどんな考えを持ったとしても、いつでも捨てる覚悟があり、どんなに正しいと思っても最高ではないと知っている事は、新しいリズムをキャッチし、進化し続ける秘訣と言えます。
人間は地球の頭脳細胞として、個性を発達させなければなりません。しかし、それはゴールではなく、次へのステップにすぎません。周囲には自分と同じように固有のリズムを発達させた仲間がいます。私達はそのような仲間と共に協力し、より大きな目標の為に貢献しなければならないのです。この横と縦の繋がりこそが、愛なのです。
多くの人が主張を持つようになった今、世界の問題解決は昔のように単純ではありません。しかし一見危機的状況に見える利己主義も、人が進化したからこそ直面している壁なのです。この危機は、地球の偉大なリズムを知ろうとする努力によって、乗り越える事が可能です。小さく、分離したリズムの壁を破って、生命は次々と孵化し、次の進化へと飛び立っていくのが運命です。我々の命の中には、既に愛のリズムは埋まっています。それが地球リズムの特性だからです。危機は常に次へのステップ、希望と光は、私達一人一人の自覚さえあれば、失われる事はないのです。