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手紙:2024-08-23

青い生命

青い火と赤い火

戦争や伝染病などで、世界的に多くの命が奪われる時、人は死と同時に、「生きる事」について考えるようになります。自分はいつまで生きるのか?これからどう生きるべきか?今、命について考えている人は、かつて無い程、増えています。死と生はセットであり、国や民族の違いを超えて、人間の共通のテーマは、命だと言う事がわかります。

私達を生かしている命は、大別して二つの火の種類があります。色で表現すると、「赤と青」です。「赤い火」は、個体=人格が育っていく時に燃える欲望の火です。これは個体生命の生活に根差しています。一方「青い火」は、高い知性と愛を備えた純粋な生命で、神の生命、不死と言われています。人はこの世に生まれて肉体が育ち、明確な自意識を持つまで、赤い火が燃え成長します。しかし、知性に目覚め、別の意識である魂意識に目覚めると、次第に青い火の生命を原動力として生きるように変わっていきます。この変化は、「親からもらった命と違う永遠なる生命」と表現されます。

コロナの蔓延では、生死のみならず、生活が制限され、毎日を生きる事さえ大きなストレスを感じるようになりました。しかしこのストレスは、悪い事ばかりではなく、ここから発見できる事は沢山あったはずです。そのうちの一つですが、ストレスを注意深く観察すると、自身を生かしている生命の種類が見えてきます。

私達は、大抵赤い火を中心に生きているので、自分の表現や自由な移動、欲求を満たす楽しみを奪われると、大きなストレスを感じます。一方、青い火が関わり始めると、パンデミックのような異常な時期でも、生き方を見直し、考える事に目覚め、新しい生命の充電を始めるチャンスを掴めるでしょう。今回は、人類の目標である二つの生命について、考えてみたいと思います。

物質の火

人間は誕生と共に成長し、「私」と言う自我意識が明確になるまで、物質的な生命=赤い火によって成長します。いわゆる「欲望の火」、これが赤い火と呼ばれるものです。この成長の頂点は利己主義ですが、魂はこの世で活動する為に、活発で強い自我が必要なので、必ず通る重要な段階です。フランスではロックダウンの発令にも拘らず、若い人を中心に違法パーティーが後を絶たず、感染が拡大した時期がありました。感染を恐れず、社会への迷惑も顧みず、自分のしたい事をやり通す人は、分離的ではありますが、強い欲望と独立した自我を持っています。見方によっては、人類はここまで成長したとも言えるでしょう。

それにしても、コロナ禍の行動制限を思い返すと、何故このような勝手な行動を取る人が多かったのでしょうか。社会との関係を無視し、自分の権利を主張し、猛烈な反発を示すのは、欲望を増進させる赤い火が燃え盛っているからです。赤い火は、感情的・感覚的で、個別の欲求を満たす事で燃えます。燃えている時は、体に強い感情と元気がみなぎり、活動的になります。しかし、この火は、人や物、現象、自己存在のアピール、欲求に向かって燃えるので、対象との摩擦を引き起こします。この世での競争、獲得、達成などは、赤い火を原動力とするので、自己確立を目指す若者は赤い火で活発になり成長しますが、社会との関わりで問題を起こす事も避けられません。

このように、赤い火はずっと燃え盛っていると、必ず問題や病気を引き起こします。周囲との関係や宇宙の法則を理解する魂的な愛が欠け、最後は物質的な崩壊を起こす為です。この段階では、利己的な行動から数々の失敗を経験し、「私利私欲の代償」を学ぶ必要があります。個人として発達したからには、個人の責任や社会への影響を理解しなければなりません。それが最も良い教育法の一つだと言われています。

消極的な落とし穴

一方、青い火は、責任感と知性が発達した時、頭頂を経て流入し始めます。青い生命は、存在を前進させる電気的な力を持ち、「頭部に充電」される特徴を持っています。青い火を受けるには、①欲望や本能をコントロールし、赤い火を鎮める。②地球や人類にとって良い目的を集中して考える。③良い目的の実行を考えた通りに行動で示す。この三つを訓練すると、魂から青い生命が、供給され始めます。

コロナ禍でも、静かに考え、学び、知的に集中する事が好きな人は、摩擦を避けて一人の空間を楽しむ事ができ、外に向かった活動が制限されても、余り不自由を感じなかったかもしれません。寧ろこの機会を「充電時間」として、内的に生き生きとした生命力を呼び入れ、次の活動への準備ができたでしょう。

では、興奮を収め、考える事を中心に生活すれば、必ず青い火と接触できるのでしょうか。ここに、考える事が好きな人の陥り易い「別の利己主義」があります。それは、自分ばかり学び、何も活動しない事です。これは、エネルギーを分配しない「霊的利己主義」と呼ばれます。青い火の特徴は、「前進力・表現力」なので、考えた事を表現し、周囲に分け与えなければ、新しい生命は流れ込みません。考えが深まったつもりで、行動するダイナミックさに欠けると、青い火も赤い火も両方消え、やがて生命力が枯渇する状態となるでしょう。

長い自粛期間を思い返して、調子が悪い、体力も精神力も衰えた人は、赤い火を抑圧し昇華できなかったか、又は自己満足の霊的利己主義だった可能性があります。自分のストレスや体調から学び、生活スタイルや考える時間を点検し、改善すべき点を発見して下さい。大きな変化を経験したからこそ、気づきと前進の一歩に役立てましょう。

前進する生命

青い火は、神が自らの計画を実現する意志の生命です。不死と言われる意味は、神が計画を達成するまで青い火は消える事がなく、止まる事もないからです。神の意志は、人間個人の転生よりも、普遍的で長い期間続くので、人類にとっては、未来永劫のように感じられるものです。人間は、一回ずつの人生から考えると不死ではありませんが、何回も転生するのは、神の目的と生命を受け持って、分かち合っているからです。人間存在の奥には、明らかに不死の青い生命が燃えているのです。

もし私達が、個人的な分離感や欲望を制圧し、地球の意思と共にあろうと望むなら、青い火はその姿を現すでしょう。青い火は、接触した人に神の計画の断片を見せ、実行する生命力を与えます。その人の生命は新しい力で充電され、何物も阻む事ができない強い前進力が、人生を推進し始めるでしょう。最初は、二つの火がぶつかり合い、混乱が生まれますが、人間の中で青い火が勝利する事は決まっています。何故なら、神の生命こそが、人類の根源的な故郷だからです。

赤い火は、燃え上がって個人の頂点を極めますが、分離的であるがゆえに、最後は人を苦しめる事になります。人類は、この100年で赤く燃えた欲望の結果を経験し、2025年を前に、大分苦しみました。私達はこの結果を受けて、もう少し自己犠牲を払い、地球生命と同調する意識に、変わっていかなければなりません。

未来は生命の中に

人類は一気に進化して、全生命を青い火に移行する事はできません。神は強制的に支配するのではなく、私達が自分の意志で学びながら考える力が成長し、霊的ふるさとに戻ってくる事を望んでいるからです。進化は、段階的で着実な変化であるべきです。ですから、私達が次の時代に創造する世界は、まだ完璧ではないでしょう。それでもこの教訓から学び、もう少し青い生命を取り入れる事ができれば、赤と青の新しいバランスが始まります。それは、新しい生き生きとした緑を生み出すでしょう。緑とは、人類の知的な考えを表現する文化や経済の活動を意味します。青い生命は、活動の緑を、思慮深い青みの増した色に変える事でしょう。

赤い火は、排除し蓋をする事では制圧できません。燃える方向を正しく選び、調整する事が重要です。私達は、失敗を繰り返しながら学び、不完全さを受け入れながら、次の文化を創造していくものです。それこそが、神の前進する生命の姿であり、人間の中に燃える青い命の軌跡なのです。

様々なものを失い、混とんとした暗闇の中でこそ、私達は神の青い火を発見するでしょう。何故なら、暗闇は唯一の光、神の純粋な生命を際立たせるからです。個人としても、人類としても、地球生命の一部としても、人類は歩みを止める事なく、前進していきます。未来は既に、私達の生命の中で動き始めているのです。

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