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手紙:2025-04-18

過去と未来の出会い

意識は過去を認識する

皆さんは、ギリシャ神話に出てくるエピメテウスと言う人物を知っていますか?彼の兄は、人類に火を授けた知恵者プロメテウスです。しかし、弟エピメテウスは「後知恵」と呼ばれ、結果からしか物事を判断できず、未来を予言する兄とは対照的でした。ですから、兄が「ゼウスの贈り物=パンドラ」を受け取ってはいけないと忠告していたのに、うっかり忘れて彼女を受け取ってしまったのです。そして、世界に悪が放たれました。

「何か起こらないと学習できない」これがエピメテウスの特徴です。何故こんな人物がギリシャ神話に描かれているのでしょう。それは、エピメテウスとは、人類そのものだからです。つまり「人間の意識は過去を認識する」と言う特徴を表しているのです。一体どういう事でしょうか。実は、密教的な「過去」「現在」「未来」とは、私達の一般的な認識とは大分違います。今回は、密教的定義の違いを知り、最も重要な意識の進化に役立てたいと思います。

エピメテウスが認識する事は、全て起こった事、物質界の結果です。それは、物事が完結した結果=過去と言え、物質界は過去の連続で出来上がっていて、自分自身の存在でさえ例外ではありません。人格である「私」は、意識と行動を積み重ねた結果、つまり過去の産物と言えます。例えば、才能は目的意識と努力の結果、病気は長い年月に渡る意識活動が誤っていた事の結果です。人を苦しめるストレスは、殆どが記憶、情報や知識、自分の評価、それに対する思いなど、起こった出来事から発生しています。人間の意識は何故、物質の結果にばかり囚われ、過去に束縛されるのでしょうか。

過去と現在の意味

人の意識が過去を認識するようになっているのには、正当な理由があります。人は生まれる時、優れた理知性である魂意識が、頭頂から肉体に接続されます。しかし、物質界に定着する為に、一旦魂との線を切って、意識は物質界に監禁されるのです。そうして人格の意識が育ち、自分自身や他の人、環境、現象など、物質界を認識できるよう発達します。

魂にとって、物質界とは闇の世界です。それは悪いと言う意味ではなく、異質な世界と言うべきでしょう。ですから、私達はまずエピメテウスになって、過去を認識するようセットされているのです。
それでは、「現在」とは何でしょうか。普通の認識では「今意識している状態」ですが、密教的には、それは過去になります。現在とは「まだ起こっていない事を考え、行動している活動様態」です。つまり、目的を持って何かを表現しようとか、何かを変えようとしている活動自身が、「現在」と言う訳です。となると、目的を持たず、惰性や習慣で動いているのは、現在とは言えないのです。

人間は、密教的に「現在」を生きる生命体です。未来と過去が、私達の創造活動の中で出会うからです。人は、まだ起こっていない未来をイメージし、物質界で活動し、過去を創り続けます。つまり、変化や未知のものをイメージする目的があってこそ、創造活動=現在を生きる事になるのです。

過去を認識できるようになった私達は、次に現在を生き、成長していきます。それには豊かなイメージ力と、力強い行動力と表現力が必要なので、多くの人が訓練中と言えるでしょう。

未来と光の質料

それでは、「未来」とは何でしょうか。密教的に真の未来とは、魂の中にあります。それは、厳密に言うと、まだ物質界に表現される前のエネルギーです。人間の意識は、本来魂から派遣された理性です。ですから、一旦切れた意識を、過去=物質界から離して魂に繋ぎ直すと、真に価値ある使命や意味、地球の進化の方向性や宇宙法則など、人類が認識すべき純粋思考の世界がわかるようになります。そこは意味と法則の世界であり、「このような結果になる」と言う現象を示すものではありません。つまり、魂が認識する世界が未来、それを自由に表現する活動が現在、そして物質界に出た結果が過去と言う仕組みです。私達の意識は、魂を目指す事で、初めてエピメテウスを卒業し、未来を意識するプロメテウスに変わっていくのです。

更に、未来である魂に意識が繋がると、意識は光を伝達する線に変わります。人類の真の役割は、活動を通じて物質界に光を混ぜ合わせる事です。そうすると、光を混ぜ合わせない活動は、いくら形を変えても過去の繰り返しで、魂の使命を果たしていない事になります。習慣的な繰り返しや、過去の栄光や自分の欲望から望む未来とは、魂からすると、闇の形を変えているだけに過ぎないのです。このような場合、カルマの法則が働いて予期せぬ不幸が起こり、「意識が過去に留まっている」と知らされ、エピメテウスのままだと教えられます。

現在、知性が発達し活動が活発になった私達だからこそ、動機が未来に関係しているか、過去に根差しているかが問われる時代となったのです。この観点から、日常生活の意識が何を目指し、どんな活動をしているか、じっくり考えてみる必要があるでしょう。

苦しみの中から未来が見える

長い年月をかけて、ここまで知性が進化してきた人類は、過去=物質の扱いに相当長けてきました。しかし、どんなに優れた結果を出せても、意識が未来に向いていなければ、人は依然として過去に住んでいる事になります。

愛とは単なる知性と違い、光に向かう明確な方向を持つ意識です。私達の感性も益々洗練され、同じ行為、同じ活動でも「動機が違う」と感じ取れるようになってきました。そして愛ある知性は、感じた違いを論理的に理解し、未来に向く方向を決定します。このように、人類の意識は次第に純度を高め、方向を模索しながら、過去から脱しようとして、様々な苦しみが起こっています。多くの人が真の未来を求める事で、過去に根差した利己的な物質主義は、人から好まれなくなり、世界は確実に変わっていくでしょう。

このような「過去」「現在」「未来」に対する密教的な定義は、人類全体が発達した為に与えられた知識です。光に反応する感性、意味を理解する抽象的な知性、そして悲惨な過去を改め光を求める多くの人の願い、これらが一つになって、人類全体は真の未来に向かっているのです。この変化は、宗教的な考え方だけでなく、あらゆる分野で起こっている為、意識の糸は人類を総動員して編み込まれ、過去と未来を繋ぐ橋のように成長を続けています。

人類の愛の祭典

さて、人類と魂の「意識の橋」を、毎年強化する霊的な祭典があります。魂と人類の双方から互いに手を伸ばし橋を強化するのが、双子座の満月=「人類の祭典」です。今年は、世界的な苦痛から、未来を願う人々が相当数増え、この祭典を祝うでしょう。平和、自由、人権、命の平等性…、人類のあるべき姿を切に望む意識が、世界中から発せられ、魂に向かいます。言葉にならない思いを抱いている人々、助けを求めて心の叫びをあげる人々も含めて、私達は一人でも多くの人の心の声をすくい上げなければなりません。形は違っても、神を求める意識が純粋ならば、魂の愛は、必ず応えてくれるでしょう。

霊界は、気の遠くなる年月をかけて、人類から湧き上がる祈りを待っていました。今回、様々な過去が姿を現した事で、人類の意識は強い意志で、魂と繋がる橋を築く事ができるでしょう。私達自身も、意識の橋が未来に届く事で、「未来」に対する概念が新しくなるはずです。過去を創っている真の原因は、意識です。人類の意識が変われば、物質界に表現される過去は光を帯び、魂の原理に近い結果に変化していくでしょう。このように、神は人類を通じて過去を何度も修正し、偉大なる贖罪を完成させていくのです。これからの百年では、未来と過去が接近し、一つに融合していく事を願います。

 

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