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手紙:2025-11-28

感情との付き合い方

感情と知性の区別

最近の新入社員に対するアンケートで、どんな上司がいいかと尋ねると、80%以上が「優しい上司」を希望しています。新入社員に、優しく接して指導する上司は、かなり感情を支配し、言葉にも気を付けないといけません。その上で、仕事ができるよう部下を育てる訳ですから、これは上司の試練と言うべき事態です。

感情をコントロールする事は、仕事だけでなく、人生のテーマそのものです。病気の原因には、長年蓄積された感情が関係し、人間関係でも感情が支配できれば、かなり問題や失敗は少なくなるでしょう。このように、私達は感情に苦しめられますが、感情は悪いものではありません。人生を豊かに彩り、人を勇気づけ、人と人を繋ぎ助けるきっかけを作るのは感情です。

感情は、神が創った一つの意識活動で、立派な役割があります。感覚や感情、本能と言った意識は、生きている限り無くなる事はなく、反射的に湧いてくるもので、それ自身が悪い訳ではありません。問題は、扱い方にあり、没頭し密着し過ぎる為、苦痛が起こるのです。要は、感情との付き合い方がまずいのです。

現在、私達は知性と感情が混じった「自意識」を使っていますが、遥かに感情の割合が多く、感情を裏付けする為に、知性が使われているような状態です。ですから、まずは自分の意識の中で、感情と知性を分ける、二つの区別を訓練する事が大事です。この点が充分できないと、動機を特定し、更に高度な魂意識との繫がりは期待できません。今回は、全ての人のテーマでもある「感情との付き合い方」を考える為、その役割を理解し、日常での留意点を検討したいと思います。

感情は情報の一つ

人の意識活動は、何かに接触した時、まず感覚が発生します。その後、個人的な意識と結びつくと、「感情」が生まれます。感覚や感情とは、何かに接触した時の自動的な反応です。この反応を自分の意識だと「重要視」して主張すると、問題が起こり易くなります。何故なら、感情は流動的で一貫性がなく、人や場合によって、かなり違いがあるからです。共感し易い日本人には、わかりにくいかもしれませんが、最近では同じ日本人や家族であっても、世代によってかなり違いがあります。もっと大きなグループで言えば、国や民族によって、相当な違いがある事を考えると、感覚や感情の反応は「人類共通の真理」ではないとわかります。

では、何の為に感情があるのでしょうか。これは何かに接触したサインなので、一つの「情報」として捉えるべきものです。ですから、感じた事が「何を意味するか?」「何と接触したのか?」と、「分析する知性」に置き換える作業が重要です。また、感情は固有のもので、接したものが部分である可能性があります。後から全貌がわかったら、早とちりや誤解による反応で、そんな思いは必要なかったとわかるケースは多いものです。つまり、感情とは人が何かを知り、考え、行動を起こす「きっかけ」を作る役割があるのです。感情があるからこそ、新しい世界に目を向け、広く知り、助けを求めている人や現象を知る事ができるのです。

私達の問題は、自分一人の感情を元に考えを固め、発言や行動を起こす事、その想いを過度に重要視して離れられなくなり、知性が働かなくなる事です。ですから、何を捉えた反応かを直ちに考え始め、情報を更に集め全貌を捉える努力をする必要があります。

意識傾向を掴む

日常生活では、様々な感覚が反射的に起こるので、全てを考える必要はありません。考えるべき対象は、重要な選択をする時や、人への影響がある関係、不快な気分や興奮などで想いが長時間続く時です。また、私達の人格には、必ず傾向があります。感情と知性が入り混じった自意識が、怒りっぽいとか同情し易いなど、主にどんな反応が多いか、どんな信念や断定が多いかを掴みましょう。そのような時は、強い想いから断定的になり、失敗に繋がる事が多いものです。ですから、自分固有の感情が湧いた時こそ、「考える」チャンスだと決めていると、大きな助けになります。その傾向を知っていると、反射的に判断する前に、「少し待てよ」と注意深く警戒し、感情から離れて知的に考える時間が取れます。

同時に、違う反応をする人達と知り合う事で、必ずしも自分の反応が当然ではない事もわかり、冷静になったり、参考意見を聞く余裕が持てるでしょう。人は感情的に行動した時、想いを遂げてスッキリし、一時的に手応えを感じるものです。しかし、それは感情的になっている時の反応で、かえって問題を起こし、後悔する事も多いものです。大切なのは、速さや爽快感、感情そのものではなく、何と接触したのかを捉え、何の意味があるのかを正確に掴む事です。

日常生活では、種々雑多な事が起こり、私達の心が色々な反応を起こしながらも、対処を迫られます。しかし、その背後で何が進化しているかと言えば、様々に反応する意識を識別し、情報として扱い、その奥にはどんな意味があるかを判断する力を養っているのです。感情を分離し、情報として扱えるようになると、この識別力は格段と進化するでしょう。

選択と運命

本来の感情の役割とは、物質界のあらゆる存在に接する事です。接触と同時に、心には対象の感情と欲望が映し出されます。この時、私達の心が浄化され透明な鏡となっていれば、自分の意識と区別し、相手の意識を正確に読み取って正しい関係の土台を築けます。

ところが、人間は自分自身の欲望も発達している為、対象と自分の欲望が混ざり合い、勝手な想像や固有の感情を作ってしまいます。ここから誇張や誤解、増幅が起こり、新たな問題が起こってしまいます。だからこそ、知的で冷静な分析が必要なのです。感情と知性を分離する作業とは、自分自身の欲望や動機を識別する事にもなるでしょう。

どんなに頭の良い人でも、個人的な考えには必ず固有の感情が混じっています。固有の考えで、人や物、自然界、自分自身まで扱うと、本来の存在意義が歪められてしまいます。この扱い方の歪みが重なって、人生が思わぬ方向に進み、より複雑な感情に囚われて、魂との接触が難しくなってしまうのです。密教の本では、どうしたら魂と接触して知性が発達するか?と言う問いに、「感情を退ける能力」と単純明快に答えています。つまり、感情を無くすのではなく、巻き込まれないようにし、区別して俯瞰する力を養う事が大切なのです。感情は、同胞や自然界と接触する為に、重要な意識ですが、そこに留まると、正しい活用ができなくなってしまうのです。感情を退ける意識焦点が確立すると、魂と繋がる接点となるでしょう。

感情の活用

欲望や感情とは、本来、生命が物質界で存在する時、最低次元で表現される低位の意志です。ですから、自分の欲望と混ぜ合わせずに理解できたら、そこには存在理由のかけらが含まれています。また、この世では、感情が豊かで上手に表現できる事は、大きな魅力の一つです。必要な人や物を惹きつけ、自然界の生命に接する時、感情豊かな意識は武器の一つになります。

更に、感情は想像力の源です。イメージ力、想像力は、見えない世界への翼となり、瞑想の土台を作ります。感性や感情が豊かに広く発達していないと、魂の発見や瞑想への取り掛かりが遅れてしまうかもしれません。

感情は、抑圧したり、排除するのではなく、一つの情報として活用できれば、私達の考える力は飛躍的に進化するでしょう。この力がつくと、自分のみならず、周囲の人を援助し、助ける事もできます。何故なら、多くの人がこの問題で苦しんでいるからです。更に、訓練を重ねて感情が浄化されると、心は魂の光を映し出し、魂と繋がっている感覚を捉える最初の器であると気づくでしょう。

神が創った尊い意識の一つを、理解し正しく扱う事で、人は魂へと解放されていきます。これから人類は益々敏感になり、意識が扱う情報が増えていきます。だからこそ、人生で何を学んでいるかを理解すると、人は死ぬまで、やるべき事が残されていると気づくでしょう。意識の前進を続けて行きましょう。

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