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手 紙
手紙:2025-12-26
時間からの解放
時間の感じ方
コロナ禍が終わって時間が経ちました。皆さんは、あの頃、どのような時間を過ごしていたか、覚えていますか?世界は再び激しく動き出し、地球が沸騰していると言われる気候の今、時間はどのように進み出したでしょうか。「時間」の速さは、世界共通ですが、時計の時間とは違い、時間の速さは人によって違います。一人の人でも、年齢や環境、状況によって、かなり差が出てくるものですが、何故このような感覚の違いが起こるのでしょうか。
魂の中には、時間はないと言われますが、密教的に時間を定義すると、「物質の変化を、脳が感知する事で発生する」と言われています。つまり、時間とは物質界特有の存在なのです。物質の変化が遅いと「時間が止まっている」と言い、変化が激しいと時間が速いと表現します。また、睡眠中や脳がダメージを受けて働かない状態では、人にとって時は無いのも同然です。つまらない事に付き合っている時は、時間が遅く感じられ、集中して何かに取り組んでいると、時間はとても速く過ぎると感じます。時間とは、主観的な意識によって、速くなったり遅くなったりするものです。
コロナ禍では、行動が制限され、時間が止まったかのように感じられた人もいるでしょう。反対に多くの変化や新しい事を経験し、三年間がアッと言う間に過ぎた人もいるでしょう。時間とは、その人の意識と深く関係しています。皆さんは、現在、どのような時間を感じていますか?今回は、時間と意識の関係を考え、意識の変化から時間の捉え方の違いを考えてみたいと思います。
過去の縛られた時間
時間の始まりを考える時、以前説明したギリシャ神話のエピメテウスの話を考えてみると面白いでしょう。彼は世界に悪を放ってしまったパンドラの夫です。兄のプロメテウスから忠告を受けていたにもかかわらず、彼はゼウスから贈り物であるパンドラを受け取ってしまいました。そしてパンドラは、ゼウスからの忠告を破って箱を開け、世界にあらゆる悪が飛び出しました。慌てて閉めた箱の中には、「希望だけが残った」、という物語です。
エピメテウスは、過去から学ぶ「後知恵」の象徴、現在の私達を象徴しています。人は、結果を経験する事で、過ちや間違いを悟り、それを直す「後知恵」によって進化します。つまり、私達の意識は、パンドラが放った悪=失敗や不完全さを経験し、そこから学ぶようにできているのです。後知恵とあるように、それは過去から学ぶ事でもあります。
一方、箱の中に一つ残った希望は、未来をイメージする意識です。未来とは、まだ起こっていないイメージ、魂に繋がる意識です。人は苦い経験から、より良い未来を求めて、前進し、進化します。人類は、より良い生活を求め、環境や意識を改善し、進んできました。
しかし、良い未来を望み、過去の過ちを訂正したとしても、結果に重きを置くと、それは直ちに過去になる為、意識は時間の流れに縛られる事になります。以前の過ちよりましになり、望んだ事に近い結果が出たとしても、時間の流れに縛られ続ける事には変わりありません。過去とは、物質的に固められた結果であり、より改善された未来から考えると、常に不完全な要素を含んでいます。では、どうしたら、私達は過去と時間の呪縛から解放されるのでしょうか。
過去は形態にまつわる記憶
では、ここで時間から解放されている「魂意識」について考えてみましょう。プロメテウスもゼウスも、「約束を守る」よう伝えました。これは、「法則を守る」事、つまり、法則を理解し、その通りに行動する事を教えていました。エピメテウスは、パンドラの美しさに目がくらみ、パンドラは好奇心に負けて、約束を破ってしまいました。魂意識とは、法則を理解し、その通りに行動する理性を表しています。
私達は、欲望から結果や形に固執しますが、経験のプロセスから学ぶ事や、法則の理解を重視すると、意識は過去から引き揚げられます。時間の流れとは、物質の形や結果の連続であり、それを捉えた「私の記憶」で成り立っています。
一方、「法則」とは、全ての人、全存在に共通して働くものです。物事の背後に働く法則の発見に意識を向けると、「物質界の私」から離れて、変化に一喜一憂するような影響を受けなくなります。同時に、法則を発見しようとすると、多くの事例や関係の理解が必要になります。そうなると、人を責めたり優劣を考えずに、あらゆる人の経験から学ぶようになるでしょう。つまり、魂意識では、全ての人が、法則を学ぶ為の「私」である為、個別の「私」は無いと言えます。これが魂の一体性で、物質の変化=時間に縛られない世界と言えるのです。
私達が物質界の経験を、法則を学ぶ材料だと理解すると、現実界に住みながら、意識は時間を超えた「考える世界」に住むようになります。何かに集中して考えている時、ハッと気づいたら大分時間が経ち、驚く事がありますが、その時の意識は、時間空間に縛られない世界にいたのです。このように、人は、何度か時間が無い世界を経験しているはずなのです。
愛は時間から解放する力
現代人の知性は、今、恐ろしいスピードで進化しています。科学の発達で、物質を扱う力が進んだ為、変化が速くなり、時間が速く感じられるようになりました。しかし、どんなに知性が発達しても、人は時間の束縛から逃れる事はできません。その中で起こる優劣、勝ち負け、損得、競争は激化し、益々時間に追われるようになっていくのが現実です。では、時間の束縛から解放される為には、知性以外に何が必要なのでしょうか。
それは「愛」です。愛とは、意識の正しい方向性と関係を理解する力です。意識が物質に向くと「欲望」になり、個別の「私」の記憶で縛られ、時間に束縛されます。一方、人類を一つのグループとして捉え、その関係性と進むべき方向を考えると、愛に辿りつきます。今、多様性を認める事や、全ての人の福利を重んじる方向性は、魂の愛が人類に浸透してきた影響によるものです。その影響から、高い知性を持ち、個性的でありながら、多くの人の生活を豊かにし、困った人を助けようとする別の価値観を持つ人が増えてきたのです。また、勝ち負けや優劣などを求める生き方から、距離を置く人も増えてきました。
愛が発達すると、パンドラの箱に残された希望は、欲望が描く自分に都合の良い結果でなく、人類全体の関係性や原理を学ぶ理解に向くようになります。理解を深める事に希望を持てば、私達は物質的な進化を競い合ったり、奪い合ったりする事は少なくなるでしょう。むしろ、宇宙の法則から学び、与え合い、助け合うようになる為、物質の無駄な表現は少なくなるでしょう。
意識の方向転換
より優れた結果を、より早く出さなければならない世界では、どんなに優れた知性を持っていても、結果に振り回され、益々時間に追われるようになります。物質の変化は無限ですから、人はその中で命をすり減らしてしまいます。愛による意識の成熟だけが、時間の束縛から人を救う事ができるのです。
物質とは、神の愛を表現する為にあるものです。私達が握りしめて、個人を満足させる為にあるわけではありません。素晴らしい世界の表現をする為には、時間は大切なものではありますが、時間から離れた愛の世界を知る事は、もっと重要です。私達は、愛が何であるか、まだ理解できませんが、求めるべきものである事は知っています。時間に束縛される物質に、これ以上意識を奪われ、生命をすり減らしてはいけません。命を活かし、世界を正しい方向に導く愛、パンドラの箱に残された希望が、愛に向くよう、人類の舵は、大きく方向転換されるでしょう。